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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『スパイダーマン:ホームカミング』

2017-08-22 | 映画レビュー(す)

スパイダーマンがマーヴェルに帰ってきた。
 実は映画化権がソニーにあり、今回は特別契約でマーヴェル・シネマティック・ユニバース(MCU)へ合流という、オトナの事情をクリアした再リブート作だ。トム・ホランド版スパイディ初お目見えとなった『シビル・ウォー』の続編となるため、蜘蛛に噛まれてスーパーパワーを手に入れた話もベン叔父さんが殺された話も“知ってるでしょ?”と割愛。アベンジャーズ入りを夢見る高校生ピーター・パーカーを何とジョン・ヒューズ風に描くという大胆アレンジだ。最近のマーヴェルは本筋(『キャプテン・アメリカ』シリーズや『アベンジャーズ』シリーズ)をルッソ兄弟に手堅くまとめさせながら、ジェームズ・ガンやタイカ・ワイティティ、そして本作のジョン・ワッツら個性派監督を招聘してMCUに新風を吹き込む余裕っぷりである。

何より注目したいのはキャスティングのダイバーシティ化だ。
 いわゆる白人のジャンルであった“学園モノ”に多種多様な人種のキャストが揃っており、驚かされる。この傾向は今年上半期の大ヒットドラマ『13の理由』でも顕著だったが、元来本作の舞台クイーンズはじめアメリカの当たり前の光景であり、それが表現として可視化されたのが今年である理由は言わずもがなであろう。ドラマや映画で描かれる学校がようやくリアルになったという意味で、この2作は今年の最重要作だ。中でもゼンデイヤ扮するキャラクターは…おっと、これは見てのお楽しみだが、この配役ができるという事は極端な例え、『美女と野獣』のヒロインを白人以外でも演じられる時代が来るという意味だ。とても嬉しいことじゃないか。

今やMCUの代名詞であるキャストアンサンブルの活気は今回も好調だ。屈託なく、弾けるようなトム・ホランド君を座長ダウ兄(註:ロバート・ダウニーJr.)が久々のちょいワル社長モードで援護。こちらも久々の俳優専任ジョン・ファブローが楽し気だ。悪役ヴァルチャーには『バットマン』も
『バードマン』も演ったマイケル・キートンが扮し、ノってる熟練の凄味で充実だ(それにしてもほんの数年前までB級落ちしていた人とは思えない活躍っぷり!)。このブルーカラー労働者であるヴァルチャーが大企業スタークによって仕事を奪われるところから映画は始まるのだが、社長(そしてアベンジャーズ)の責任を問わないのは前作『シビル・ウォー』との差別化だろうか、それとも本作のトーンにそぐわないからか。『スパイダーマン』の大きな主題である“大きな力には大きな責任が伴う”のためには必要なモチーフだと思うのだが…。

 学園パートがあまりに楽しいため「ホランド君が声変わりする前に急いで続編撮って!」と思ったら、今年21歳ってあの変声期みたいな声、地声かよ!!


『スパイダーマン:ホームカミング』17・米
監督 ジョン・ワッツ
出演 トム・ホランド、ロバート・ダウニーJr.、マイケル・キートン、ジョン・ファブロー、ローラ・ハリアー、ゼンデイヤ、マリサ・トメイ
 

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