長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』

2023-01-06 | 映画レビュー(あ)

 歴代興行収入記録を塗り替える歴史的大ヒットを記録した前作『アバター』からなんと13年ぶりの続編である。金儲けのためなら手段を問わないハリウッドでは異例の製作期間だが、かつてジョージ・ルーカスが『ジェダイの復讐』から『ファントム・メナス』まで18年もの時間を必要としたように、ジェームズ・キャメロンもまた水中での3D撮影を可能とする技術開発を中心に時間を費やしていた。前作公開当初「次作は水棲種族の話になる」と発言していたことを記憶しているが、彼はこの13年間惑星パンドラに取り憑かれていたのだ。万物を創造し、最新映像技術で観客を自身の世界に没入させる本作はまさに天地創造を行った神の如き映画製作である。創造神キャメロンの欲求によって『ウェイ・オブ・ウォーター』は中盤、パンドラの海洋をダイビングするだけに1時間も費やされ、結果192分の尊大とも言うべき上映時間になっている。

 だが僕は人類が地球に住み続けることができなくなったとしても、パンドラに移住したいとはこれっぽっちも思わない。ジェームズ・キャメロンが偉大なフィルムメーカーであることに疑問はないが、彼はジョージ・ルーカスやハヤオミヤザキのようなヴィジュアリスト、イマジネーターではない。パンドラの生態系、自然現象には少しも心惹かれないし、青くてひょろりとしたナヴィに3時間も夢中にはなれない。パンドラの海は地球が失くした豊かな自然を持っているかもしれないが、描きこまれたディテールは全てを手に入れた表現者が陥る底なしの表現過多である(そう、『スター・ウォーズ』プリクエル3部作でも起こった事だ)。これは実写映画ではなく、長編3DCGアニメでは?という議論を今更するつもりはなく、よくできたゲームのムービーシーンという印象は13年を経た今でも変わらなかった。前作以上に実写の人間が映るパートは少なく、時折使われるハイフレームレートのクリアすぎるペラペラとした映像がキャメロンの人間に対する興味を物語っているとも言えなくない。

 それでも観客に尿意を覚えさせることなく3時間を見せきる豪腕や、捕鯨問題も絡めた自然主義的なテーマは68歳の巨匠らしい風情があり、なにより終盤の海難シーンは『アビス』『タイタニック』など、一度通ってきた道だけに一日の長があるスペクタクル演出だ…“Way Of Water”ってそういう意味かよ!


『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』22・米
監督 ジェームズ・キャメロン
出演 サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー、スティーヴン・ラング、ケイト・ウィンスレット、クリフ・カーティス

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