長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『3人のアンヌ』

2017-11-08 | 映画レビュー(さ)

イザベル・ユペール、老いてますます盛んなチャレンジ精神だ。この2011年には“韓国のウディ・アレン”と呼ばれるホン・サンス監督作品に出演した。国際映画祭の常連サンス監督作とはいえ、まだまだ未知数の韓国映画界へ身体1つで飛び込んでいる。自由奔放な脚本、デタラメなカメラ(なぜそこでズームする!?)のホン・サンス節からはユペールに首ったけなのがありありと伝わってくる。さすがは名だたる奇才監督攻略してきたユペール様だ。

韓国のうらさびれた漁村で女の子が映画の脚本を書き始める。
「韓国のとある漁村、アンヌという女性がやってきて…」
一軒の民宿を舞台にホン・サンスは映画を3つのチャプターで構成する。ユペール演じるアンヌはある時は有名映画人、ある時は不倫妻…と各章毎に全く立場が異なる役柄になっており、ユペールという同一人格で形成されたそれらは、まるでわずかな選択から枝分かれした別の人生ようにも見えて面白い。サンスのユペール愛や1本の映画では彼女の魅力を撮り切れないとさながらトリビュート映画のように盛り込んでいるのである。

 こんなド田舎のロケではろくろく言葉も通じず、超低予算の撮影は体当たりのチャレンジだったのではないだろうか。恐れを知らない彼女の姿勢はその後、ポール・ヴァーホーヴェンの『ELLE』で世界的な大成功へと結実するのである。

『3人のアンヌ』12・韓国
監督 ホン・サンス
出演 イザベル・ユペール
 

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