長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』

2018-01-15 | 映画レビュー(み)

ハリウッド映画はアメコミだけじゃない!
シリーズ最新作はトム・クルーズの覚悟が伝わってくる本塁打だ。彼はありとあらゆる手を尽くし、人気アクションシリーズこそハリウッドのお家芸だと見得を切る。『ワルキューレ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『アウトロー』と組んできた名脚本家クリストファー・マッカリーを監督に迎え、愚直なクラシカルさがよりアメリカ娯楽映画としての風格をもたらす辺りに名プロデューサーとしての辣腕ぶりも伺える。シリーズ起死回生の傑作となった前作『ゴースト・プロトコル』に劣らぬ完成度に、いよいよアメリカ版007とも成り得る長寿化も現実味を帯びてきた。

アヴァンタイトルが猛烈に素晴らしい。神経ガスを積んだ軍用機を止めようとタブレット片手にサイモン・ペッグが登場。ワシントンにはジェレミー・レナー、アジアにはヴィング・レイムズとお馴染みのメンバーが勢揃い。そこに走り込んでくるのが(そう、あの胸のすくようなダッシュで)トム!あれよあれよと軍用機の翼に飛び乗り、扉にへばりつく。そのまま飛行機は空へ…。プロモーションも映画の武器。“トムちんが生身でスタントをやっている”、その事実が観客を高揚させる。オーマイガッ!!

この生身のアクションはもはやジャッキー・チェンばりの見せ物だが、トムちんがやるとギャグでも曲芸でも終わらず、一枚看板スターの貫禄にすら見えてくる。バイクチェイスに至っては一人だけノーヘル、シャツ1枚というサディスティックなまでの演出だ。

おまけにこのスターの輝きは周りの曲者俳優達を照らし出している。シリーズ3作目の登板となるペッグはコミックリリーフの域を超え、トムちんの最高のスクリーンバディとなった。そう、トムは誰とでも相性の良い俳優だが“名コンビ”と呼べる相手を持たない珍しいキャリアでもあった。

そして最近のトムちんは女優のチョイスもいい。ハリウッド映画にヨーロピアンテイストを持ち込んだ『オブリビオン』のオルガ・キュリレンコ、史上初トムちんとタメを張った『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のエミリー・ブラント、そして本作のレベッカ・ファーガソンだ。イーサン・ハントと対等のスパイである彼女は「全てを捨てて私と逃げましょう」とまるで大スターの重圧から解放されなさいと語りかけているにようにも見え、泣かせるのだ。

 この周りを光らせる貫禄と余裕はトムちんがかつて肩を借りたダスティン・ホフマンやポール・ニューマンのそれではないだろうか。トムにはもうしばらく唯一最後のスターとしてハリウッド映画の恒星であって欲しいように思う。


『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』15・米
監督 クリストファー・マッカリー
出演 トム・クルーズ、レベッカ・ファーガソン、サイモン・ペッグ、ジェレミー・レナー、ヴィング・レイムズ、アレック・ボールドウィン、トム・ホランダー、サイモン・マクバーニー、ショーン・ハリス
 

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