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脚本家ダン・ギルロイの監督デビュー作は夜な夜なカメラ片手に衝撃映像を追う報道パパラッチを描いたサイコスリラーだ。警察無線を傍受し、事故や事件を聞きつけると現場に急行。ショッキング映像を撮影し、TV局に売りつけるフリーランスを“ナイトクローラー”と呼ぶのだという。視聴率至上主義により際どい絵を求めるTV局の報道倫理を描くのかと思いきや、ジェイク・ギレンホール扮する主人公ルーにはそもそもこの仕事に対するこだわりがほとんどない。『ナイトクローラー』の魅力はギルロイの丁寧な描写とギレンホールの怪演が成就させたルーというキャラクターだけで映画を駆動させていく所だ。今時、そんなキャラクター主導の映画なんて珍しいじゃないか。
ルーは無職であり、食い潰している。特段、学も技能もない今やどこにでもいる若者だが、圧倒的に自制心が欠如しており、自己顕示欲が強く、他人がどうなろうが一向に意に介さない。彼が他人の身体的苦痛にも無関心である事はオープニングからも明らかだ。そういうヤツは決まって幼稚な車のチョイスをし、母親ほど年上の女に惚れ込む。ナイトクローラーになったのもすぐに始められる仕事であり、自分の才覚で稼げるという過信からだ。彼は誰の受け売りなのか繰り返す「クジに当たりたかったらまずはクジを買え!」。
充実のジェイク・ギレンホールが体重を削ぎ落し、爛々とした目で血を吸うカメラを携える。成功のためなら周囲の人間を犠牲にする事すら厭わない彼は極悪人であり、サイコパスだが映画は彼を断罪しない。成功を勝ち得る事こそ“アメリカンドリーム”であり、その自分本位さこそトランプ時代の現在に連なるアメリカ的リバタリアニズムの醜悪さなのだ。
艶やかなLAのネオンを撮らえた名手ロバート・エルスウィットの素晴らしい夜間撮影が本作の狂気を彩る。アメコミだけではないアメリカ映画の本領となる1本だ。
『ナイトクローラー』14・米
監督 ダン・ギルロイ
出演 ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメド、ビル・パクストン
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