
ホロコーストで主導的役割を果たしたとされるナチス戦犯アイヒマンの捕縛を描いた実録サスペンス。当時、南米に潜伏していたアイヒマンはイスラエル諜報機関モサドによって逮捕され、歴史的裁判にかけられる事となる。『アバウト・ア・ボーイ』や『トワイライト』シリーズ等を手掛けてきたクリス・ワイツ監督がメガホンを取り、これまでにない大人っぽい語り口を見せた。自身もユダヤ系であるだけに想いも強かったのか、さながらスピルバーグにおける『シンドラーのリスト』のような気迫である。音楽アレクサンドル・デスプラ、夜間シーンの深みが素晴らしい撮影ハビエル・アギーレサロベのカメラらスタッフワークも好投だ。
1960年、アイヒマン潜伏の情報を掴んだモサドは慎重に裏付けを取り、ついに捕獲作戦を決行する。しばしば世界最強のスパイ組織と称されるモサドだが、どういうワケか映画では実戦不足で場当たり的と描かれる事が多く(『ミュンヘン』)、ここでも予定外のトラブルに次々と見舞われ、映画の緊迫感は増す。国外脱出ルートを絶たれた彼らが10日後の飛行機を待つ件は『アルゴ』を彷彿とさせ、狡猾なアイヒマンとの心理戦にサスペンスは高まる。
アイヒマンの“凡庸さ”をいち早く感じ取ったピーター・マルキン(オスカー・アイザック)が人間的扱いを施す事で心を開かせていく過程が面白い。さすがの巧さでアイヒマンを演じるベン・キングスレーは邪悪さと哀れさを同居させ、それは後の裁判でも露わにならなかった表情では、と思わせてくれる真実味があった。
終幕のアルゼンチン脱出からアイヒマン裁判まではもう少し時間をかけて欲しかったが(ピーターの足取りがわからない)、ピーターが己の心に決着を見出す姿は胸に迫るものがあった。描かなければならない、というワイツの思いが感じられる1本だ。
1960年、アイヒマン潜伏の情報を掴んだモサドは慎重に裏付けを取り、ついに捕獲作戦を決行する。しばしば世界最強のスパイ組織と称されるモサドだが、どういうワケか映画では実戦不足で場当たり的と描かれる事が多く(『ミュンヘン』)、ここでも予定外のトラブルに次々と見舞われ、映画の緊迫感は増す。国外脱出ルートを絶たれた彼らが10日後の飛行機を待つ件は『アルゴ』を彷彿とさせ、狡猾なアイヒマンとの心理戦にサスペンスは高まる。
アイヒマンの“凡庸さ”をいち早く感じ取ったピーター・マルキン(オスカー・アイザック)が人間的扱いを施す事で心を開かせていく過程が面白い。さすがの巧さでアイヒマンを演じるベン・キングスレーは邪悪さと哀れさを同居させ、それは後の裁判でも露わにならなかった表情では、と思わせてくれる真実味があった。
終幕のアルゼンチン脱出からアイヒマン裁判まではもう少し時間をかけて欲しかったが(ピーターの足取りがわからない)、ピーターが己の心に決着を見出す姿は胸に迫るものがあった。描かなければならない、というワイツの思いが感じられる1本だ。
『オペレーション・フィナーレ』18・米
監督 クリス・ワイツ
出演 オスカー・アイザック、メラニー・ロラン、ベン・キングスレー
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