長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『機動戦士ガンダムNT』

2018-12-19 | 映画レビュー(き)



昨今の『スター・ウォーズ』シリーズを見ていて残念に思うのがメカニカル描写のアイデア不足だ。『ジェダイの帰還』から30年間も戦争状態にある世界が何の軍拡もなく同じ兵器を使い続けるのか?このクリエイティヴィティの欠落にかつてジョージ・ルーカスが成し得てきた旧3部作と同等以上の物は2度と登場し得ないのだなと感じてしまうのである。

そんなディズニーのフランチャイズ化に先駆けること数十年、40年間に渡って巨大な帝国を築き上げてきたのがガンダムシリーズだ。富野由悠季から始まり多くのクリエイター達によって創造されてきたこの世界は未だ多くの人を魅了してやまない。最新作となる『ガンダムNT(ナラティヴ)』は前作『UC(ユニコーン)』で新たな地平を築いた福井晴敏による新作だ。大きな期待がかけられていた。

ここにあるのは前述したディズニー×スター・ウォーズ同様、創造性の欠如だ。巻頭早々、30年以上も前になる『機動戦士Zガンダム』に登場したマイナーメカ、ディジェが出てきてウンザリする。今回のラスボスは前作『UC』同様、巨大MAネオ・ジオングの色違いだ。何より主役機ナラティヴガンダムはじめ、モビルスーツが一向に格好良く映らない(ガンプラが欲しくならない)。これはロボットアニメとして致命的ではないか?
ストーリーにも同等の怠惰さがある。主人公ヨナら3人はティターンズのニュータイプ研究所で育てられた強化人間で、そのうちの1人ミシェルはやはり『Z』に登場したルオ商会の娘だ。『スター・ウォーズ』同様、長大なサーガは重箱の隅を突けばいくらでもエピソードが掘り起こせるが、そこに新しさはあるのか?

そして最も深刻なのが福井晴敏の原作小説をアニメへ置換できない鈍重さだ。説明的なセリフは何度も物語を停滞させ、コロニー内で繰り広げられる第2幕は回想シーンをしょい込み過ぎて停止寸前だ。本作の90分は40年分のガンダムシリーズよりも遥かに長く感じる。富野御大ならこの10分の1のセリフ量でやり切っただろう。

 そもそもあの傑作『逆襲のシャア』の続編なんて語られるべきだろうか?あの余韻に満ちた幕切れは当の御大が続編を避け続けてきた事で永遠となり、おかげでガンダムシリーズは新たなる作り手に大きく門戸が開かれた。あの超常的な力に理由を付け、語り直した事で本作の終幕はほとんど『ドラゴンボール』みたいな状態だ。今後、『F91』に連なる空白期間の全てを語りかねない勢いだが、一体どうやって辻褄を合わせるのか。こんな過去の遺産を食いつぶすような駄作を量産しない事を願うばかりだ。



『機動戦士ガンダムNT』18・日
監督 吉沢俊一

 

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1 コメント

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初めまして (師子乃)
2020-04-23 18:58:40
なかなか残念なことが多いようですね。

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