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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『カムガール』

2018-12-23 | 映画レビュー(か)
 インターネットのビデオチャットで裸を見せたり、性的なやり取りをする“セックスチャット”。世の中にはこんな物まであるのかと驚くばかりだが、さっそくこれを取り入れた映画が現れた。低予算ならではのアイデア勝負が気持ちの良いホラー映画だ。

 主人公ローラはビデオチャットでセクシーなパフォーマンスを配信する所謂“ユーチューバー”だ。裸同然の下着姿や自殺を装った過激パフォーマンスは見せても、セックスはやらないという自分なりのルールを科して日々の投稿に余念がない。今は人気ランキング50位内に入る事が目標だ。より注目を集めようとついに公開オナニーに踏み切ってしまった翌日、アカウントが何者かに乗っ取られる。リアルタイムでより過激な実況をしているのは自分と瓜二つの誰かだ。

 僕はオンラインゲームをやっている時、こんな感覚を抱いた事がある。深夜も過ぎた頃、仮想空間は自分以外にアバターの姿はない。そんな無人の街を歩いていると、ポツンとひとり誰かが立っている。彼は何をするでもなく、ただただこちらを見つめている。単にプレイヤーが離席しているだけなのだが、僕はうすら寒い物を感じてしまった。モニターの向こうには本当に誰かいるのだろうか?人を模したアバターが幽霊のように思えてしまったのだ。

 それはあながち突飛な考えでもないだろう。電気技術の発達に伴って人類は幽霊の存在も探求してきた。写真は霊の姿を撮らえ、電波はあの世の声を拾うと信じられてきた。ネットが普及した今、光の向こうに人ならざる者の存在を感じても不自然ではないだろう(SNS時代の心霊ホラーがオリヴィエ・アサヤス監督の
『パーソナル・ショッパー』だ)。

 『カムガール』は理屈で考えると全くつまらなくなってしまう。これはインターネット時代のドッペルゲンガーを描いたモダンホラーだ。主人公は一度、自分を殺す事で成長する。低予算ホラーの慣例に倣ってヒロイン役マデリーン・ブルーワーが捨て身の奮闘。既に
『ハンドメイズ・テイル』
にも出演するなど、注目株だ。覚えておこう。


『カムガール』18・米
監督 ダニエル・ゴールドハーバ
出演 マデリーン・ブルーワー

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