長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ネオン・デーモン』

2017-02-13 | 映画レビュー(ね)

ニコラス・ウィンディング・レフンの怖れ知らずな『ネオン・デーモン』は前作『オンリー・ゴッド』以上に観客を唖然とさせる大怪作だ。モデルを目指して上京してきた16歳の美少女エル・ファニング(透き通るような美しい肌!)がLAの魔窟に蝕まれていく物語はイニシエーションものにもサスペンスにも収まらない。羨望と嫉妬が絡み合うモデル達の確執は殺人、屍姦、人肉食へとエスカレートしていく。

ソフィア・コッポラならまだしも、北欧の鬼才レフンの映画で主役を張れてしまうエルたん(註:エル・ファニング)の作品選択眼は大いに頼もしく、少女と女の中間に居る刹那をフィルムに残す事ができたのも映画の神に愛された故だ。
しかし本作はそんな一時の“季節”よりも、それが過ぎ去ってしまった持たざる女達にこそ見るべきものが多い。かつてエルたんと同じく天才子役と称されたジェナ・マローンはエルの美しさにこみ上げる欲望を抑えきれず、死化粧を施した死体に跨って自慰に耽け、オルガズムに達する。

先輩モデル役のアビー・リーは若い娘の生き血を舐め、血の風呂に浸かって乙女の肉を喰らう。ホンモノのスーパーモデルであるリーはモデル特有の硬質な美貌を光らせ、芝居の胆を押さえた上手さを見せる。ブレイク作
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の風変りなタグ役で“可愛いし、いい娘なんだろうなァ”とファンになってしまった人も多いと思うが、本作を見た後では“モデル怖ぇええ!”と凍り付くこと必至。『ネオン・デーモン』は若い頃から一線で活躍してきたマローン、リーの業界サバイバル怪奇譚にも見て取れるのだ。

とはいえ、このネタで2時間弱というランニングタイムは少々、間延びが過ぎやしないか。元々、行間を見せる監督ではあったが、本作ではセリフとセリフの間合いが意図的に引き延ばされ、彼特有の様式美が自家薬籠中に陥りつつある。次作はAmazon製作のTVシリーズが決定しており、良い意味で創作的制約が加わる事を期待したい。

レフンの狙いがハマった1つといえば、キアヌ・リーヴスの出演だろうか。エルたんにやたらとキツく当たるモーテルのオーナー役。いつもの無表情演技で不機嫌なキアヌって何でこんなにイイんだろう!(笑)


『ネオン・デーモン』16・仏、米、デンマーク
監督 ニコラス・ウィンディング・レフン
出演 エル・ファニング、キアヌ・リーヴス、ジェナ・マローン、アビー・リー、ベラ・ヒースコート
 

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