




記録的大ヒットを記録した『アベンジャーズ エンドゲーム』からわずか2か月、MCU最新作が早くも登場だ。本作は一連のストーリー”フェーズ3”の最後を締め括る作品であり、そして新章のプロローグである。その役割を担うのがアベンジャーズのリーダー・アイアンマンに見出されたスパイダーマン=ピーター・パーカーだ。『エンドゲーム』ではトニー・スタークの原動力としてピーターの喪失が描かれていたが、本作ではその関係性が裏返され、そこにスパイダーマンのテーマ”大いなる力には大いなる責任が伴う”が込められていく。今回もマーベルの作劇に抜かりはない。
本作の見所の1つが宇宙最強の敵サノスと決着をつけた今、パワーインフレしたヴィランの設定を今一度リセットした点だろう。
(以下ネタバレ)
本作の敵ミステリオは特殊効果を使ってスパイダーマンを混乱させる原作コミックファンにはお馴染みのキャラクターだ。テクノロジーを剥がせば姑息な小悪党に思えるが、「人間が見たいと思うものを見せる」というフェイクが現実に政治家からネットの隅々にまで蔓延している今、サノス級の強敵と言っても過言ではないだろう。親愛なる隣人が今一度戦うべき相手は実際に僕たちを脅かしている存在であり、それが魅力的に近づいてくる怖さをジェイク・ギレンホールは名優たる巧みさで見事に体現している。
と、小難しい事から書き始めてしまったが、前作『ホームカミング』以上に愉快な仕上がりだ。トム・ホランドはじめゼンデイヤ、ネッド役ジェイコブ・バタロンらフレッシュな若手はもちろん、”セクシー過ぎるメイ叔母さん”マリサ・トメイ、そしてマーベルのヘッド監督ジョン・ファヴローらの演技アンサンブルは活気に満ち溢れ、実に楽しい。『エンドゲーム』で気になった細かな謎(5年問題)には爆笑モノのギャグで答えてくれている。そして『スパイダーマン:スパイダーバース』への一種のアンサーとしてサム・ライミ版との思わぬリンクがされているのもお見逃しなく。
できればワイワイ、キャッキャしながら高校生活を送って欲しかったが、次回作はいよいよ波乱の予感。そしてアベンジャーズの新たなスタートである。お楽しみはこれからだ。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』19・米
監督 ジョン・ワッツ
出演 トム・ホランド、ゼンデイヤ、ジェイク・ギレンホール、サミュエル・L・ジャクソン、コビー・スマルダース、ジョン・ファヴロー、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイ、J・B・スムーブ