リッスン・トゥ・ハー

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新種のサル、アマゾン川で発見

2010-08-16 | リッスン・トゥ・ハー
「それはまるで海女のようでした」

「海にいるの?」

「だから発見はアマゾン川ですって!」

「じゃあなんで海女なのよ」

「だからその動きとか、表情とか言葉使いが海女に似ていたんです」

「海女に似てるってどういうこと?」

「たとえば、その猿はアマゾン川に潜って魚やあわびやサザエなんかを採るんです」

「アマゾンにあわびやさざえはいないんじゃないの?」

「そうですね、あわびやさざえのようなものと言えますね」

「いや無いでしょうアマゾンにあれに似たようなの」

「いやありますよ、アマゾンあわびやアマゾンさざえ」

「無いでしょう、だいたいアマゾン淡水よ」

「なんですか淡水って?」

「淡水も知らないのマジで?」

「柑橘系の果物ですか?」

「川のことだと思ってるあたしは」

「川?」

「そうアマゾンやら、だいたいすべての川は淡水っていうんじゃないの」

「そうか、アマゾンは淡水なのか」

「そう、淡水にあわびやさざえはいない」

「決まってるの?」

「決まってる」

「じゃあ、アマゾンあわびとアマゾンさざえは淡水でも生きていける人たちなんだ」

「わかった、似てるのがいると、それを潜って猿がとると、なるほどそれは海女っぽい」

「それだけじゃない、研修を終えて初めて海に潜る海女の表情をしているんだ」

「そんな微妙な表情を見分けれるのね」

「彼女らは嬉しさと恐怖が入り交じった表情をしている」

「彼女なの?」

「それから、白い衣装をつける」

「衣装?」

「そう、布切れみたいな薄いんだけど、ちゃんと肌は隠れている」

「猿が衣装着るの?」

「着てたねえまさしく」

「はあ、それは新種ねえ」

「そして、もぐってとってきて、顔を水面からだして、でっかいのいた!という」

「言うの?猿が?しゃべってるけど」

「しゃべったような気がしただけ、さすがにしゃべりはしない」

「よかった根本から覆されるところだった」

「それを繰り返して獲物をたくさんとる」

「うん」

「そして、一定量をとったら陸に上がってくる」

「一定量があるんだ」

「際限なく取り尽くしたらすぐなくなってしまうからね」

「そして、大量じゃい、と叫ぶ」

「叫ぶような気がしたのね」

「いや、実際叫んだ」

「叫んだ?」

「そこのおっさんもこれ食わんかい、てアマゾンさざえ投げてくれる」

「おっさんって言われたの?」

「それを食べてみるとこれがうまいのなんのって」

「いやおっさんて言われたのね?」

「アマゾンさざえはハイチュウにそっくりな味で」

「いやいや、しゃべっとるよねその猿」

「しゃべってるね」

「じゃあ、それ海女じゃん」

「そう海女に似ている」

「似てるんじゃなくて、海女じゃん」

「でも海女はもっとおしとやかだと思うんだ」

「は?」

「海女はもっとつつましやかに生きてる」

「いやしらんけど」

「海女は東京を夢見て夜汽車に乗る」

「のらんのらん」

「彼女は夜汽車に乗らなかったから海女じゃないでしょう」

「猿でもないでしょう」

「じゃあなんなのよ」

「海女ゾン」

「ご名答」

あいのり復活!

2010-08-16 | リッスン・トゥ・ハー
そう伝説のプログラム。あいのりが復活するという方をうけ、ナマズは動き出した。水面下で様々な憶測が飛び交い、市場は混乱しはじめている。例えば、カブトムシは早めに孵化し、樹液も吸わずに続報を待つ。見せて見せてぇと囁いている。負けてはならない、とナマズは活発な動きを見せる。与えられた餌を貯めて、フランスコース料理を作る。それぐらいの技術はもっている何せナマズだ。それから電流をびりびりと流して、ラジオ体操をして、おいしい朝食を食べて、排便を澄ませ、ひげを剃る。つるつるになったナマズはうんうんとうなづいて、家を出る。あいのり号に乗るために。どこにあるのかわからないが、そのうち出会うに違いない。それがあいのりのシステムだから、とナマズは思う。あいのり号にはおうすでに紳士淑女が乗っていて、様々な会話を重ねながら、せめぎ合いを繰り返し、恋に友情に走ってに違いない。それを考えるとナマズはわくわくがとまらなかった。どんな恋をするのだろう。破れるかもしれない、一生ともに歩む人に出会えるかもしれない。経験、それこそが人生においてどれだけ役立つだろう。ナマズは知っていた。なんとしてもあいのり号に乗りたかった。が、魚介類に、この夏の熱気は酷だった。そして夏の暑い紫外線をうけ、かんかんに焼けたアスファルトの上で干涸びた。