リッスン・トゥ・ハー

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極楽浄土、鮮やかな青

2010-04-27 | リッスン・トゥ・ハー
僧は言う。突き抜ける青だった。ちょうど太陽が真上にあって燦々と注いでいる。地面は砂であってさらさらと素足にこそばゆい。私は歩いていた。どこに向かおうとしているのか自分でもよくわからない。ただ、歩いていることが非常に心地よく、いつまでも歩いていたい、私はただ歩いているだけの人生だったとしても悔いはありません、とたしかに感じていた。浜風が吹いてきた。遠く異国の匂いがする。異国の柑橘類の匂いがふんわりと漂ってきている。海を越えて、様々なものが流れ着いている。嘆いたところでどうしようもない。時代が時代なのだ。極楽も乱れる。というより極楽こそ甘ったるい湯につかっているものどもがアロハシャツなんかを着流して、葉巻片手に水着の女に声をかける。もしくはその露出の多い女の側で酸いも甘いも軟弱な男女。紛れ込んでいるウミガメが産卵。卵はころころと私の足下に転がり、ぱっかとわれて中から飛び出すは煩悩。

アライグマが爪跡をつけたのはその柱がとても堅そうだったからではない

2010-04-27 | リッスン・トゥ・ハー
つまり堅いものを傷つけたいと言う本能みたいなもんですわ。自分の爪がこんなにも堅く鋭いのだということを世に示したい。示してどうなるというものではありませんが、とにかく示してそれから後はそのときに考えるとして、できるだけ大きな傷をぎゅんと。わいの爪もこんなにも立派になりましたよ、と故郷のおっかあに伝わればいいな。そんなとき眼の前に柱があったんです。一見すると古くさいいかにももろそうな柱で、わいは鼻で笑ってへへんて通り過ぎようとしたんですわ.次なる堅いものがワイを待っとるんやから、古い柱の一本にかまっとる暇はないんや。柱がギュンニャリと曲がってわいの方を見よった。いや、気のせいやなく実際にギュンニャリ音たてて曲がりよった。そんなわけないと思うかもしれません、無理もないわ、わいだって実際に見てなかったらこんなこと信じるわけおまへん。でも見てもうたんやからこれは仕方ない。ギュンニャリ曲がる、わいの方を見る。アライグマやい怖いのか、とこう言いましてん。柱無勢に馬鹿にされるアライグマやおまへん、その口封じ込めたるから覚悟しいやとわいはつめ立てて。