リッスン・トゥ・ハー

春子の日記はこちら

最高級コーヒー

2009-09-08 | リッスン・トゥ・ハー
部屋に入ったその瞬間から何か違っていた。今にして思えばそれはそのときに気づくべきだったのだ。そのときに気づいていれば、そのコーヒーが我々の想像を超えた代物であり、近づくのはそれ相応の覚悟がいるし、危険であると気づいてれば、あんなことにならなかったのだ。無謀ものの若者は、それを挑戦への高まりと解釈し、ズンズン進んでいった。部屋の中ほど、机の上にカップがひとつ、湯気を立てて、静かにたたずんでいる。肌にひりひりと走るもの、それを感じながらさらに近づいてコーヒーを手に取る。ここから劇的に展開する。まずそれまで静かに立ち上っていた湯気は、吹き出す蒸気のように一気に爆発した。覗き込んだ顔に、正面衝突した。当然、熱さ、衝撃、痛み、それらが一度に顔中に広がる。カット熱くなったかと思えば次の瞬間には感覚がなくなった。やれ困ったが、コーヒーをとりあえず飲もうとカップを持つ。すると、カップはぐねぐねと揺れたかと思えばもういない。どういう仕組みで動いているのかわからない。が、カップは腕に絡み付くはらってもはらってもとれないカップはだんだんと動きを弱める。その一体になってしまった我々に何がどうわかると言うのだろう。