2007/07/07(土) YOMIURI ONLINE
大間マグロ今季第1号 大物しとめた“親子船”
初漁・16歳の栄誉
全国ブランド「大間マグロ」で知られる大間町で、今シーズンのマグロ漁が本格的にスタートした。4日には第1号のクロマグロが水揚げされたが、釣り上げたのは、この日初めてマグロ漁に出た新人漁師。父親のベテラン漁師に付き添われながらの“親子船”で、今季のマグロ漁の到来を告げる127キロ・グラムの大物を見事にしとめた。
4日午前6時、大間漁協の荷さばき場。接岸したマグロはえ縄漁船「第21善漁丸」には、大間の今季の初マグロとともに、大西忠さん(48)と長男の勝人さん(16)の姿があった。
夏場に捕れるマグロは、60~70キロ・グラム前後の小ぶりなものが多いなか、今回釣り上げられたのは127キロ・グラムの大物。初マグロを釣った栄誉に加え、親子で挑んだ初日に大物マグロを釣り上げることができた喜びからか、2人の表情に疲れた様子は全くなかった。忠さんは「でき過ぎだよ。息子が運を持ってきてくれたのかな」と目を細めた。
忠さんはマグロ漁30年のベテラン。弟と2人で漁を続けてきた。一方の勝人さんは、県立海洋学院でイカ釣りなどを学び、今年3月に卒業。級友には「大間一番のマグロ漁師になる」と宣言し、父親に続いてマグロ漁師の道を選んだ。
忠さんはこれまで「邪魔になるだけだ」として、勝人さんを漁にほとんど同行させなかったが、息子の決意が固いと判断。「いずれは息子に船を譲ることになる」として、今季からは親子で船に乗ることにした。今年は例年より2週間ほど早く、3日午後7時に大間港を出港した。
船上では、縄を絡めたり、作業が遅かったりして、忠さんから怒られ続けながらも、勝人さんは必死に作業を続けた。出港から約10時間後の4日午前5時ごろ、ブイが激しく動き出した。「釣れた」。勝人さんが思った瞬間、忠さんがどなった。「手かけねぇか」。マグロを引き寄せ、電気ショックで気絶させ、モリを突き刺す。忠さんはほとんど手を貸さず、勝人さんが1人でしとめた。
「マグロの身の固さと、モリから伝わってくる電流の感覚。忘れられない。正直、マグロ漁を甘く見ていた。大間一番の漁師になるなんて、これからは口がさけても言えない」と勝人さん。忠さんは「息子にとっては人生初のマグロ。値段に関係なく、取れたことに大きな意味があるよ」と満足そうに語った。
親子が釣ったマグロは6日、東京・築地市場の競りにかけられ、44万4500円の値がついた。
大間町のマグロ漁は、これから年末まで続く。
(2007年7月7日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/aomori/news001.htm