ショチョーなんて偉くない!
先日、春先まで勤めていた会社に寄った。
あちこちで
「君たちの働きが悪いから株価が上がらない。何とかしてくれ」などと言いながら歩いていると
「tomiさーん、定年後は、することがなくて、寝てばかりじゃないの」と言う男がいた。
この男は、仕事中の居眠りで有名だから、すぐに反論した。
「確かに寝てばかりだけれど、布団で寝てるぞ。誰かのように机で寝ることはないぜ」
周りから
「言われましたね。いつだって、何倍にもなって返ってくるんだから言わない方がいいですよ」と忠告されていた。
しばらくして、他の人との会話中、「待ってました」とばかり割り込んで、再び挑戦してきた。
「tomiさんは、心臓に毛が生えているくらいだから、ストレスなんかないよ」と、うれしそうに言い出した。
そこで、おとなしく引き下がる私ではない。
「2,30本ぐらいの毛なんて、生えていると言えない。お前の基準なら、ふさふさに生えてると思うだろうけど」と、また反論した。
その男は、薄い髪を横に3度くらい行き来させたバーコード頭なのである。私は髪の毛が多く、若い時は、それが悩みだったくらいだ。顔と頭が1:1の割合だった(卓球の写真は26歳の頃)。
「だから、言わない方が良いと言ったでしょう」と若い人たちに言われていた。
このバーコード君。会社の富山営業所長を命じられ赴任した時、張り切りすぎて、システムを管理していた私に、色々と依頼してきた。北陸の分析をした報告書を作る相談で、煩わしいやら、面倒くさいやら。
「所長になったからって、認められたなんて考えるな。本社に居るだけでも目障りで、見たくもないから遠ざけられたんだ」と言って、たしなめた。同期でも、早く所長になった責任を感じているようだから
「早くショチョー(所長)になったからって、偉くなった、なんて勘違いするな。うちの娘なんか中学1年でショチョー(初潮)をやった」と言って、諭した。
このバーコード君も再来年、定年だ。
今、取締役をやっているF君も、若い頃から、私の憎まれ口の餌食だった。
一緒に組合活動をやっている頃、執行部に残らざるを得ない私たちに、先に辞めることを宣言しながら
「俺は、もうニンキ(任期)が無いから」とうれしそうに言う。
「お前のニンキ(人気)の無いのは、とっくに知っている。特に女性からの人気は全く無い」と、気にしていることをズバッと言って喜ばせた?そして、再度、任命されるように仕組んだのは当然の成り行きだった。
後年、大阪支店長に栄転する時、
「発令日より早く赴任することにした」と言うから、
「それは良いことだ。東京の部長になってから部員を喜ばせたことはないのだから、早く離任して、たまに喜ばれることをするのは良いことだ」と褒めて、励ました。
憎まれ口は、女性にも言っていた。ひんしゅく男の典型だ。
「あなたは、池袋辺りに住んでるの」
「違いますよ、なんで」
「豊島(としま)区じゃないの、みんなが、としま、年増(としま)って言うから」
「あなた、計算が速いの。暗算が得意?」
「そんなことないですよ。なぜですかあ」
「みんなが、あんざん(安産)タイプって言ってたよ」
「野球が好きと聞いたけど、ブレーブス(今は無くなった阪急ブレーブス)ファンなの?」
「巨人ファンですよ。どうして?」
「人事課で、あなたはハンキュー(半休)ばかりだと、言ってたから」
むろん相手は、気心知れた人たちで、遊び、クラブ活動、そして労働運動など、一緒にやってきた仲間たちだ。それでも、他人が聞いたら、セクハラ、パワハラ、いじめと取られるだろう危険な憎まれ口だ。
家でも変わらない。
「最近はコンキ(根気)がない」という娘に
「無いんじゃなくて遅れてるんだろ、コンキ(婚期)が」
結婚願望の見られない娘からは、冷ややかな反論が返ってくる。
「お父さんとお母さんを見てたら、結婚なんかしたくないよ」
さすが私の娘、二の句の付けない反撃をしてくる。
「俺はうちの『はにかみ王子』だ」という息子には
「年中、風邪をひいていて、はなかみ(鼻かみ)王子だろう」
「いつまでも古いものを捨てないんだから」と私を非難する妻には
「古くても捨てられない性格だから、お前と離婚もせずにいるんだろう」
むろん妻の猛反撃を受けることになる。
「もう趣味の領域だね。その憎まれ口は」と言われる。
口は達者な、私の隠れた?一面だ。