今でもパチンコ店では「軍艦マーチ」が流れている のだろうか。私はパチンコをやらないので全く分からない。
「軍艦マーチ」。正式な曲名は「行進曲軍艦」である。日本の行進曲の中でも代表的な名曲で、覚えやすい旋律と勇壮さが際だっていると思うが、残念ながら、軍国イメージが先に立ち、どこでも演奏できる曲ではない。
吹奏楽をやっている当時は、この曲が吹きたくてたまらなかった。一般的に、行進曲は低音パートが「ブン」と頭を吹き、中音部が、後うちで「パ」と入れるパターン、すなわち「ブン、パ、ブン、パ」と流れていく曲は、古い感じがして、当時、メンバーは、あまり演奏したがらない曲だった。スーザの行進曲のように、中音部も裏の旋律で飾っていくような曲が、派手で、聞き映えの良い曲として、評価も高い。しかし、この「行進曲軍艦」は 「ブン、パ、ブン、パ」が売りのひとつで、トリオ部に入る前の2小節は、「ブン、パ、ブン、パ」だけで、次の中音パート楽器の裏旋律部分に効果的なつながっていく。
詳しくない人には、なんのことか分からないだろう。曲の構成が単純でも、大きな演奏効果が得られる曲だということだ。もっとも、この裏旋律はメロディーとしては目立たず、主旋律(トリオのクラリネットの扱いなど稚拙な部分も、またそれが良いのだ)の盛り上げ役となる。「なんだか、君が代に似てる」と、吹いているサックス、ユーホニューム奏者が言ったくらい、和音で主旋律を盛り上げる裏旋律になっており、似ていると感じた曲を、それほど意識させない。本当は、気づかない方がおかしいのだが‥‥。
昨年、映画「男たちの大和」を観た。これまでの映画だと、艦隊が進むシーンには必ず流れた「軍艦マーチ」。この映画にはなかった。あの映画で流れたら、映画をぶちこわしただろう。逆に、無理矢理、士気を鼓舞する空しさを演出したかも知れない。
ところで、私は小さいときから船が好きで、特に軍艦が好きだった。小学生の頃は、右翼思想の軍国少年だったといっていいだろう。旧海軍が存続していたら志願していたかもしれない。
好きだった模型作りは、当然、軍艦が多く、特に日本の重巡洋艦が大好きだった。「鳥海」「摩耶」型重巡洋艦の構造美は素晴らしいものがある。
大和は、私にとっては少々不格好に感じられる。しかし、世界一の戦艦としては誇りに思っていた。
そして、それが頂点に達したのは、当時住んでいた父の勤務先の社宅で、我が家の階上に、最後の大和艦長、有賀大佐の長男の方が住んでいたと知ったときだ。
父と同じ会社の人で、こちらは1階、有賀さんは2階だった。父や母は「ありが」さんではなく「あるが」さんと呼んでいた。有賀さんは、今でも近所にお住まいだと聞く。
この有賀艦長は、戦艦「大和」以前、先述の重巡洋艦「鳥海」の艦長だったこともあり、格別な思いがある。
右翼思想の軍国少年も、歴史本などを読み漁るうちに「これは違うぞ」と思うようになり転向。いまやその面影はない。演奏する曲も、勇ましい行進曲から、やさしい癒しのミュージックと言われるハワイアンミュージックに代わってしまった。