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俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

メタ認知

2015-07-25 09:45:54 | Weblog
 メタ認知とは心理学用語で、自分自身を認知すること、あるいは認知を認知することを言う。
 酔うと気が大きくなる人がいる。自分は常に正しく自分は万能だとさえ思い込む。こんな人に「酔っているのだからそれ以上はやめておけ」と注意しても聞く耳を持たない。
 メタ認知能力を欠いた人が飲酒運転事故を起こす。彼の主観世界はこんなものとして把握されているだろう。
 ヤケに無謀運転や信号無視が多い。こちらが抜群のドライブテクニックで躱しているが、ジグザグ走行をする車や突然飛び出す歩行者はケシカラン。
 彼の主観にはこう映る。しかし実際にジグザグ運転や信号無視をしているのは彼だ。ハンドルを正常に操作できないから車は真っ直ぐに進めず、注意力が衰えているから信号にも歩行者にも気付かない。歪んだ主観にとっては自分だけが正常で他者が異常と映る。
 喫煙者は喫煙によって頭が覚醒すると主張する。これも飲酒運転と似た錯覚かも知れない。ニコチンとCO2によって脳の機能が低下するから夜郎自大になっているだけなのかも知れない。
 動物や子供はメタ認知能力を欠いているのだからこれは言語や共感力と同様、人間のみが後天的に獲得できる能力だろう。この能力が不充分であれば自信過剰や悲観主義に陥る。何でもできる人がいないのと同様、何もできない人などいない。そんな極論に走る人の最大の欠点はメタ認知力の欠如だろう。
 ギリシャのアポロンの神殿には「汝自身を知れ」と掲げられていたと伝えられているが、メタ認知とは自分を認知することだから自分対自分という構図になる。それは現在の自分対過去の自分であったり、欲望を満たしたい自分対モラルを守りたい自分であったり様々だが、基本的に自分対自分だ。メタ認知があるからこそ自分を社会内で正しく位置付けることができる。
 かつて福田元首相は退陣に当たって「私は自分を客観的に見ることができるんです。」と語った。しかしその後がいけない。「あなたとは違うんです。」と言ってしまった。
 メタ認知力を欠いた人が描く構図は自分対他者だ。自分に有利なものは善であり不利なものは悪だ。こんな人が社会に対する復讐という理屈を使って通り魔事件を起こす。自分対自分という構図が無いから、現在の自分対他者という構図になり他者を無差別に攻撃する。
 こんな意見は少数派だろうが、初等教育で最も大切なのはメタ認知能力の育成ではないだろうか。発達障害という精神病質があるが、これは正しくメタ認知力の欠如だろう。

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