俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

罰の抑止力

2009-12-01 15:39:02 | Weblog
 ある本に次のように書かれていた。
 殺人犯145人に尋ねたところ「犯行時に死刑を念頭に浮かべた者はただの一人もいなかった。」従って「死刑には威嚇力がほとんどなく」「殺人の防止には、刑罰を重くするだけでは駄目」だ。
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 うっかりしていると納得してしまいそうな理屈だが、このデータはサンプルを選び間違えている。風俗店の店内で「風俗営業は必要か」と尋ねるようなものだ。あるいは禁煙集会で喫煙率を調べるようなものだ。
 実際に殺人を犯した人はその行為に対する罰を、どういう訳か予想できなかった人と見るべきだろう。もし予想できるような正常な心理状態だったら殺人など犯さなかったとも言えるだろう。
 抑止力が働いた人は殺人者にはならない。殺人や傷害を起こしそうになった時にその後の罰(家族の苦しみを含む)を考えた人は思い留まっただろう。逆上したりしてそういう理性を失った人が殺人犯になったのだ。
 罰を重くすることによって明らかに減った犯罪がある。危険運転致死傷罪だ。この法律によって飲酒運転事故だけではなく飲酒運転そのものも大幅に減った。
 罰が犯罪に対する抑止力を持つことは確実だ。しかし国家による殺人とも言える死刑が正当かどうか私は判断しかねる。

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