俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

健康

2016-09-24 09:48:38 | Weblog
 初夏に受けた健康診断の結果を見て呆れてしまった。総ての検査数値が基準範囲内つまり「健康」と判定されていたからだ。言うまでも無く当時の私の健康状態は既に生涯最低のレベルだった。食べることさえままならず余命1年程度と思える状態であり体力もボロボロになっていた。かれこれ30年間続けていた健康のための水泳を止めたのも丁度この頃だった。明らかな病人が健康時以上に高く評価される健康診断とは一体何なのだろうか。健康診断とは健康状態を見るための検査ではないようだ。死にそうな病人が健康と判定されるのは指標が根本的に間違っているからだろう。
 女性美の基準は健康診断よりも更に酷い。ミイラのように痩せこけた人が美しいと評価される。昔から佳人薄命と言われるのは、美しい人が夭折するからではなく、死にそうな人を美しいと評価するデカダンスの文化が日本を覆っているからだろう。アスリートの健康美こそ美しいと私は考える。
 異存は大いにあるだろうが、美とは他の価値評価に依存するものだと私は考えている。道具の美は機能性に従属し、女性の美は繁殖力に基づく。概して貧困国では太目の女性が、豊かな国では細目の女性が美しいと評価され勝ちだが、日本の場合、美だけではなく健康まで痩せ過ぎの状態の評価が高い。更に言葉まで歪められている。本来食事を意味するdietが減量の意味で、健康を意味するhealthyが低カロリーの意味で使われている。デタラメな言葉がすっかり社会に定着している。
 思想もデカダンス文化の支配下にある。現状や日本文化を否定する人が文化人とされているから、そんな不健全な社会で真にポジティブであろうとする人は常識を否定するニヒリスト、つまり現状のデカダンスの価値を否定する肯定的ニヒリストたらざるを得なくなる。ではなぜ日本人がデカダンス文化に汚染されたのだろうか?GHQによる洗脳が成功したからだろう。
 第二次世界大戦の終結時にアメリカおよび白人社会にとって重大な課題が2つあった。1つは白人による世界支配体制を維持することであり、もう1つは日本が2度とアメリカ等に逆らえなくすることだった。しかし前者はすぐに破綻した。インドネシア、フィリピン、インドなどで独立の気運が高まりアジア諸国は次々に独立を果たした。その一方で後者は成功を修めた。それは原罪意識を日本人に植え付けることに成功したからではないだろうか。
 キリスト教には奇妙な思想がある。アダムとイブが禁断の果実を食べたことが人間の根源的な罪=原罪とされていることだ。この原罪の思想はキリスト教の宗派によっても解釈が異なるほど難解なものであり、キリスト教ではない私にはさっぱり理解できないが、GHQは日本人に原罪に似た意識を植え付けた。日本人であるということだけで罪であり恥であるという自覚が日本人に植え付けられ、それが現在に至っているのではないだろうか。
 一部の民族には「選民思想」がある。こんな自分達だけが選ばれた特別な民族であるという排他的な思想など要らないが、日本人であるということだけで罪と恥を背負わねばならないという考え方は不合理かつ不健全だ。こんな偏見を植え付けられたからこそ次世代を残すことに罪悪感を覚えて人口は減り続けているのではないだろうか。ベビーブームの主役はこんな邪悪な思想を植え付けられる前の世代だった。

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