俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

歯原病

2015-12-27 09:52:24 | Weblog
 虫歯は文明病だ。不自然な生活をしているからあらゆる動物の中で人類だけが虫歯を患う。サメは歯の再生力(自然治癒力)を持っているから歯を傷めても何度でも生え替わる。しかし哺乳類の歯には自然治癒力が備わっていない。虫歯にならないのだからそんな能力など必要なかった。
 人類だけが虫歯になるのは、動物の進化を無視して不自然な食物を常食しているからだ。野生動物の食物は植物と動物であり所謂「炭水化物」(食物繊維は含まない)を食べる動物は鳥か昆虫だけだ。どちらも歯を持っていない。人類は歯がありながら炭水化物を食べるから虫歯になる。
 子供の頃「甘い物を食べると虫歯になる」と教えられたと思うがこれは正確ではない。「炭水化物を食べると虫歯になる」が正しい。虫歯の原因になるのは炭水化物だ。このことは考古学によっても裏付けられている。農耕以前の人類には虫歯が無かったとのことだ。農耕によって米や麦などの穀物に頼るようになってから虫歯という奇病に人類が悩まされることになった。
 実は人類以外に虫歯を患う動物がいる。それは家畜とペットだ。本来であれば摂食しない筈の炭水化物を人類と同じように大量に摂取するから人類特有の奇病を彼らも患うことになってしまった。
 口腔内には約100億個の細菌が棲んでおり、大半の病気は経口感染する。動物の体はこれらの侵入を防ぐために胃と腸に防疫機能を備えている。ところが口腔内に傷口があれば防疫システムが備わった消化器を経由せず直接体内に病原体が入ってしまう。動物の進化においては手つかずのままだった新たな感染経路が虫歯などの歯周病によって作られてしまった。本来起こる筈の無いことが起こったのだから人体はこれに殆んど抵抗できない。農耕を始めて以降の人類だけが持つ歯周病の傷口から侵入する病原体に対抗できるシステムなどどの動物にも備わっていない。口腔から直接病原体が侵入するような異常事態は数億年に亘る進化史の中で初めて起こったことであり、それに対応できる防疫体制を作るような進化などこれまで一度も無かった。だからこそ人類だけが生活習慣病などの奇病を患うことになる。これを「歯原病」と呼んで差支え無かろう。原因不明のまま対症療法に終始している生活習慣病の多くは歯原病だろう。生活習慣病が不治の病となっているのは、医学と歯学が分断されているからではないだろうか。
 私は肥満の原因は炭水化物だと考えている。汎用性のある蛋白質や脂質とは違って炭水化物はエネルギー源にしかならない。しかも安価であるために大量摂取され勝ちだからエネルギーとして使い切れない分は脂肪として体内に蓄積される。
 虫歯と肥満、そして歯原病の原因となる炭水化物の摂取量を減らして、蛋白質と脂質と野菜を食生活の中心に据えるべきだと私は考える。ご飯やパンに依存する食事は断じてヘルシーではない。糖質制限は減量のためだけではなく、歯の健康、更には歯原病の防止のためにも有効だろう。

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