俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

治癒力

2015-02-24 10:23:30 | Weblog
 風邪症候群の原因となるウィルスは200種類以上あるそうだ。ではなぜ同じような症状が現れるのだろうか。原因が異なれば結果も異なる筈だ。なぜ異なる原因が同じ結果を招くのだろうか。
 発想の転換が必要だ。風邪症候群の症状はウィルスが原因なのではなく免疫が原因と考えれば納得できる。病原体に対抗するシステムがワンパターンだから同じような反応が起こる。
 肺炎の初期症状が風邪と似ているのも同じ理由だ。肺炎のウィルスに対しても免疫は発熱や咳といった常套手段で対抗する。これで退治できれば風邪症候群で終わるし退治できなければ肺炎になる。
 有害物や毒物を食べた場合、それが傷害を起こす前にまず下痢や嘔吐が起こる。有害物が様々であっても消化器系が真っ先に取る対応は下痢だ。これによって速やかに排泄しようとする。
 打撲や捻挫をすれば患部が腫れる。これは2種類あるようだ。自然治癒力が働くための腫れと内出血による腫れだ。大晦日のボクシングの世界戦で天笠尚選手は左頬を大きく腫らしてTKO負けを喫した。多分これは内出血だろう。内出血であれば血管が切れているから治療が必要だ。一般の腫れであれば自然治癒力が働いているのだから放置したほうが早く治る。
 民家の火災であれ工場の爆発であれ初期対応は同じだ。まず消防車が駆け付ける。消防車で解決できなければ他の対策が使われる。動物の治癒機能もこれとよく似た仕組みと思える。病原体に対する免疫反応が風邪症候群であり、毒物に対する反応が下痢や嘔吐、筋肉や関節の損傷には腫れだ。これらの自然治癒力によって動物は体を守っている。
 健康保菌者とはどういう状態だろうか。様々なケースが考えられる。まず未発症者だ。潜伏期間の長い病気であれば発症するまでは保菌者であり続ける。第二に考えられるのは発症に至らないほど微量の保菌者だろう。殆んどの人が微量の病原体を持っている。では本来発症する筈の量の病原体を抱えながら健康でいるのはどういう人だろうか。2種類考えられる。病原体に強い人とその病原体に対して免疫機能が働かない人だ。もし後者であれば突然重篤化する前の危険な状態ではないだろうか。長い潜伏期の病気もこの一種かも知れない。あるいは下痢をしにくい体質とは実は有害物を溜め込み易い困った体質であるかも知れない。

相対的貧困率

2015-02-24 09:41:45 | Weblog
 2012年の日本の相対的貧困率は16.1%でOECD加盟国ではアメリカに次いで2番目に高かったそうだ。随分実感と違うとは思っていたが、思わぬところでこの統計のトリックに気付かされた。韓国紙の中央日報日本語版は21日にこんな記事を掲載した。
 「韓国はOECD加盟国のうち2番目に低賃金労働者の比率が高いことが分かった。(中略)中位賃金の3分の2未満を受ける低賃金労働者の比率は25.1%と把握された。これはOECD平均の16.3%を大きく上回り、米国(25.3%)の次に高い。(中略)日本は14.3%」
 この記事に基づくなら日本は格差社会ではなく世界有数の平等社会だ。最初は誤報かと思った。相対的貧困率は中位の半分以下の所得しか無い人の割合でこれが16.1%と報じられているのに、中位の2/3未満が14.3%しか占めないということはあり得ない話だ。
 また統計のマジックに騙されていたことに気付いた。韓国のデータは労働者の賃金を比較しており、日本で広く喧伝されているデータは全世帯での比較だ。全世帯だから私のような年金生活者や子供や専業主婦まで含めて世帯収入を家族数で割った数値だ。ワーキングプアを問題にするなら韓国のように労働者だけを対象にすべきだろう。
 日本の相対的貧困率が高いのはワーキングプアが原因ではなく働いていない人が多いからだ。つまり高齢者が多いことが原因だ。しかし多くの高齢者はフローが少なくてもストックがある。だから決して貧困を意味しない。
 先日も「中流」で騙されかけた。格差社会を問題視する記事だったが、その根拠とした内閣府による昨年の調査結果を見れば、自分を中流と考える人が93.1%を占め、下流と考える人は僅か4.6%だ。これなら充分「一億総中流社会」と言える。格差だ、貧困だ、と騒ぎ立てる人はデータを勝手に解釈しているだけだ。これではシングルマザーのような本当に困っている人が見えなくなる。
 昨年の11月に安倍首相は「エネルギー価格の高止まり」という明らかに間違った発言をしたし、民主党の岡田代表は16日の代表質問で「格差拡大」を連発した。主張は事実に基づかねばならない。結論を正当化するために都合の良いデータを拾い集めるのは朝日新聞だけの手口ではないようだ。
 マスコミ、政治、医療といった職に就いて理性的であるべき人が正しい根拠に基づいて合理的な判断をしようとしないのは全く困ったことだ。日本人は論理学を必須課題に位置付けて国民全員が基礎から学び直す必要があるようにも思える。