2,多文化共生施策について
(1)自治体への支援について
全国の自治体の中で、技能実習生・特定技能外国人の人口比率が最も高いのは長野県川上村で27.4%、2位が南牧村で17.9%です。3位は群馬県昭和村7.6%です。過日、川上村の実態についてお話を聞きました。川上村では、インドネシアの方が最も多く724人、次にベトナムで336人、次いでフィリピンで82人、ほか合計で1237人です。川上村の人口は4,647人です。川上村では、外国の皆さんがいなければ、農業が成り立たないと川上村の農政担当者が言っていました。農家の方も、外国の方に来てもらえるよう選ばれる努力を行っていますし、法律に基づく住居環境の整備も行っています。過去にベトナムの方が最も多かったときは、役場にベトナムの方をコーディネーターとして雇い、様々な相談事にのったり、ベトナムに帰ってからの農業指導の橋渡し役などもしていたそうですが、現在はいません。
長野県としても、「日本語教育の体制づくり」「しんしゅう日本語教育人材バンク」「長野県多文化共生相談センターなど相談体制の充実」などに取り組まれてきました。今後、外国の皆さんを受け入れる市町村が多くなって行くことが予想されますが、日本語教育や生活相談など、多文化共生の施策を行っていくためには小規模自治体では難しさがあります。県として日本語教育の人材派遣の充実、母語による生活相談員の派遣など、自治体を支援する仕組みをさらに充実させていく必要があるのではないでしょうか。
【県民文化部長】私には、多文化共生施策の自治体支援の充実につきましてご質問を頂戴いたしました。昨年度、県では市町村を対象といたしまして多文化共生施策に関しますアンケート調査を実施し、その回答を基に、川上村、南牧村を含む19市町村に訪問、聞き取りを行いました。その中で議員ご指摘の通り、小規模自治体では外国人に対する日本語教育や生活相談などの対応が難しいという意見を多く頂戴しておりまして、全県に共通する課題として認識しているところでございます。
これまで県では市町村支援の取り組みとして、先ほど議員からご紹介をいただいたものの他、日本語教育の専門家を県下4地域に配置し、市町村の地域日本語教室の開設運営を支援、また県多文化共生相談センターによる市町村への出張相談会や市町村相談員を対象とした研修会などを実施してまいりました。これらの取組に加えまして、多くの要望をいただいておりました、外国人を対象とした医療機関等での通訳制度につきましては、小規模自治体では対応が難しいことから、県の新規事業として、この夏から開始するよう現在準備を進めているところでございます。
今後の市町村支援の充実につきましては、少子化・人口減少対策戦略の策定に向けての意見交換でいただいたご意見を踏まえ、多文化共生施策に関する役割分担などの観点から検討をしてまいります。
(2)子どもの日本語教育について
松本市子ども日本語教育センターは、松本市教育委員会が「日本語を母語としない児童生徒の日本語支援事業」をNPO中信多文化共生ネットワークへ業務委託して運営しています。年間50人くらいの外国由来の子どもたちが、市内の小中学校に散在しており、現在12名の日本語教育支援員に加えバイリンガル支援員2人も加わり、日本語の教育を行っています。
①外国由来の子どもたちへの長野県の日本語教育の現状と課題をどのように捉えていて、対策をどのように行っているのでしょうかお伺いします。
【教育長】外国由来の子供たちの日本語教育の現状と課題について、あるいは対策についてというご質問でございます。義務教育課の調査によりますと令和6年度の時点で、本県において日本語指導や支援が必要な外国籍の児童生徒は463名でございます。
そうした児童生徒の学習指導や生活支援を行うため、国において教員配置の基礎定数化を進めており、本県では44の小・中学校に日本語指導もしくは生活支援のための教員を配置し、支援が必要な児童生徒の98%の指導が可能になっていると承知しておりますが、不足分につきましては、校内の支援体制や市町村費で職員配置により補っていると承知をしております。
しかしながら、課題は日本語指導の専門スキルを持った教員が少ないことでございまして、県教育委員会では県内4地区、年2回ずつ開催する外国人児童生徒指導等研修会や日本語指導の研究者を講師に招いた研修会を開催するなど、担当教員の資質向上に努めているところでございます。
【中川】外国籍の子どもたちには教育を受ける権利が憲法上保障されていませんが、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」及び「児童の権利に関する条約」により、文科省は「公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には、国際人権規約等も踏まえ、日本人児童生徒と同様に無償で受入れ、教科書の無償配付及び就学援助を含め、日本人と同一の教育を受ける機会を保障」しているところです。しかし、現実には就学期に達した外国由来の子どもに就学の案内が届いていない事例もあります。
②公立の義務教育諸学校への就学希望を漏れがないように把握するためには医療や福祉機関などとの連携が必要だと考えますがいかがでしょうか。
【教育長】外国由来の子供の就学希望の把握についてということでございますが、令和5年4月に文部科学省が公表した令和4年度外国人の子供の就学状況等調査によりますと、県内の学齢相当の外国人の子供の数は、日本語指導が必要な子供の数を含め1570名、うち不就学は8名、就学状況が把握できない子供は10名ございました。
議員ご指摘の通り、外国籍の児童生徒は就学の義務はないものの、市町村教育委員会がその存在を把握した時点で住民票の有無に関わらず、就学案内を届け、就学を促すこととなっておりますが、全ての方々にこれが届いているかというとそうではない可能性があるということを認識しております。
県教育委員会といたしましては、医療や福祉機関等の連携を密にし、て把握した外国人の子供の状況を速やかに共有することなど市町村教育委員会に促し、外国人の子供の学びが保障されるようにしてまいりたいと考えております。
(3)入管法・技能実習法改正を受けて
【中川】今通常国会で、入管法・技能実習法が改正され、就労を通じた人材育成及び人材確保を目的とする新たな在留資格として育成就労の在留資格が創設され、特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、当該分野における人材確保を目的に、一定の条件の下で転籍を可能にしています。
国会の中では、「この改正で労働者として権利保護が行われるのか」「不適切な送り出し、受け入れを監視できるのか」「失踪問題は解決できるのか」などが議論されました。あわせて、入管法の改正で、「不法就労助長罪の厳罰化」「永住許可の要件を一層明確化し、税金の滞納をした場合などに永住権を取り消す」こととしていて、これについても「外国人差別につながるのではないか」といった議論が行われきたものと承知しています。
日本は、深刻な人口減少社会のなかにあり、当分この状況を克服することはできず、労働分野での外国人の受け入れを拡大する方向で法改正が行われたものと考えています。
私は、外国人も同じ地球に住む人間として、共に働き共に生きることのできる社会をつくり、特に長野県が外国の皆さんから選ばれる県となっていくことが求められていると思いますが、法改正を受けての知事の見解をお伺いします。
【知事】多文化共生政策についてご質問を頂戴いたしました。
入管法そして技能実習法の改正を受けての見解ということでございます。いま人口減少について様々議論を行う中で、やはりこれからの地域社会に求められることは多様性を尊重すること、そして寛容な社会をちゃんと作っていくということが重要だと考えております。現在でも農業であったり製造業であったり、外国人の皆さま方が長野県の産業分野の中でご活躍をいただいているところであります。
こうした中で、ともすると今、円が非常に安い水準になってきています。外国の方から見て果たして日本という国が働きやすい環境であるのかということを考えると、様々な課題があると思っています。そうした観点で、私としてはぜひ外国人の方にとっても暮らしやすい社会をしっかり作っていくということが重要だと考えています。
単なる労働力として受け入れるということではなくて、地域でともに暮らし地域を一緒に今作っていくパートナーとして受け入れて、外国人も含めた全ての県民の皆様のウェルビーイングを実現していくということが重要だと考えております。
先日、人口減少の戦略の策定に向けて若い皆さんと意見交換をさせていただきました。例えば、信州大学の留学生との意見交換の中では、県内に日本語学校や日本語を学ぶ場所がもっと増える必要があるんじゃないか。あるいは日本の文化やマナーを学ぶ機会イベントこうした日本人との交流の機会が増えていくことが必要ではないか。というご意見をいただいたところでありまして、こうしたご意見は非常に重要だと思っています。
私としては、こうした意見交換の内容も踏まえながら、一つは外国の皆様方の人材としての受入の促進、そしてもう一つは多文化共生社会を作っていく。この二つの観点から、この人口戦略の中でも対策・対応を盛り込んでいきたいと思っていますし、関係の皆様とともに多様性が尊重される、外国人の皆様方にとっても働きやすい、暮らしやすい長野県作りに取り組んでいきたいと考えております。
【中川】外国由来の皆さんと共に生き、共に働いていく社会を創っていくことは、長野県だけでできるわけではありませんので、国に対して外国人基本法など所要の施策整備を求めていくことを要望し終わります。
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