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村山談話継承されず

2015-08-16 18:41:44 | 政策・訴え・声
2015年8月14日

戦後70年の安倍首相談話について(談話)

社会民主党幹事長 又市征治

1.安倍首相は、本日の臨時閣議で、戦後70年の首相談話を決定し、発表した。戦後50年の村山首相談話では、日本の「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」たことを認め、「痛切な反省」と「心からのお詫びの気持ち」を表明し、戦後60年の小泉首相談話も同様の表現を踏襲していた。「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」として「部分的には引き継がない」ことを示唆してきた安倍首相は、先の大戦への「反省」の意は公然と明らかにしたが、「侵略」と「お詫び」という表現については、内心拒否感を示してきたことから、「痛切な反省」、「植民地支配」、「侵略」、「お詫び」の4つのキーワードにどう言及するかが焦点となっていた。今回の談話でこれらの文言が一応明記されたことは、日本による違法な侵略戦争によってアジア諸国の人々に多大な犠牲と苦痛を与えたことが歴史的事実であり、加害国として謙虚に向き合い謝罪するべきであることから、当然のことである。しかし、これらのキーワードは、先の大戦をめぐる歴史的経緯の一方的な説明や、歴代政権の取り組みに触れるくだりで触れられたにすぎない。いずれも第三者的な触れ方であり、日本による「植民地支配」や「侵略」自体に直接言及し謝罪したわけではないことは、日本の加害責任を曖昧にすることになる。また、「お詫び」も首相が直接「お詫び」を表明したわけではなく、いやいやの「お詫び」ではむなしく響く。「先の大戦への深い悔悟」も、大戦の何に対しての悔悟なのか不明確である。言っていることと現実の安倍政権がやっていることが違うのであれば、過去の談話より後退しているといわざるをえない。

2.もともとナショナリストとして知られ、歴史修正主義的視点を持っている安倍首相は、第2次政権発足直後に、「安倍内閣として村山談話をそのまま継承している訳ではない」と発言するとともに、「21世紀にふさわしい未来志向の談話を発出したい」と表明していた。侵略の定義についても、「学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」、「歴史認識については歴史家が決めるものだ」などと発言していた。70年談話を出す最大の狙いは、謝罪や「お詫び」の繰り返しを終わりにする談話にすべきだとの考えがあり、歴代の首相談話を更新・上書きすることによって換骨奪胎することにあった。しかし、アジア諸国からの強い警戒心に加え、アメリカやドイツなどからも自省を求められ、一時は談話を閣議決定せずに安倍首相「個人」の見解にして、自分の歴史認識を反映しようとする姑息な手段も考えられていた。結局、21世紀構想懇談会報告書でさえ「侵略」に言及したことに加え、市民の側からの70年談話をつくる動きや世論の高まりなどに抗しきれず、自縄自縛に陥り、キーワードを盛り込むという妥協を余儀なくされることになった。しかも先の世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」とこれで区切りをつけようとしているが、キーワードをちりばめただけでは、本当の意味での謝罪になっていない。

3.安倍首相は、「歴史認識では(過去の談話の)基本的な考えを引き継ぐと言っている以上、もう一度書く必要はない」としていたが、村山談話と小泉談話を同一の表現で継承するだけなら、わざわざ安倍談話を出す必要自体がなかった。また、かりに責任逃れや自己弁護に終始したり、戦前復古的な内容になったり、「侵略」や「植民地支配」に対する「反省」・「お詫び」への言及がなかったりするような、独りよがりで「勇ましい」内容のものであったならば、外交問題に発展し日本の国際的な孤立を招くことから、そういう談話もいらなかったといえる。沖縄基地問題や原爆被爆者問題、空襲被害など民間の戦争被害、戦没者の遺骨収集など、70年たっても解決しない問題がいくつもあり、未解決の課題の解決に向けた談話なら意味があったが、安倍首相にはこれらへの問題意識は乏しい。

4.談話は、21世紀構想懇談会報告書と同様、1931年に始まる満州事変以来の戦争が大きな誤りであるとする認識に立っている感がする。しかし、柳条湖で南満州鉄道の線路を爆破し、これを中国軍の仕業として軍事行動を開始した満州事変は、1928年の張作霖爆殺事件以来の関東軍の陰謀によって引き起こされたものであり、満州事変以前の中国侵略や、1930年代以前に朝鮮半島や台湾を植民地支配したことへの日本自身の反省と謝罪が談話に見られないのは問題である。中国支配を巡ってロシアと戦った日露戦争を、植民地解放戦争であったかのように評価しようとしていることにも疑問が残る。

5.談話は、敵として熾烈に戦ったアメリカなどの支援のおかげで未来をつないできたのだから、これからはアメリカなどに貢献するといわんばかりに、「自由で、公正で、開かれた経済システム」の発展や、「積極的平和主義」に基づく「世界の平和と繁栄」への決意を示し、規制緩和やTPPなどの「世界で一番企業が活動しやすい国」づくりや、立憲主義に反する戦争法案などの「戦争ができる国」づくりを推し進めていることを強調している。「いかなる戦争も、法の支配を尊重し、武力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである」といいながら、自衛隊をいつでもどこでも派遣できるようにする「武力に基づく平和」を目指す政策を次々と推し進めているのは、大きな矛盾である。大事なのは、戦後70年の平和国家としての歩みをこれからも続けることであり、憲法9条が指し示す「武力によらない平和」を目指すことである。また、靖国神社参拝やA級戦犯合祀など、日本側が近隣諸国との友好的な未来を閉ざしてきたことも反省する必要がある。

6.村山談話は、「内外すべての犠牲者」に深い哀悼の念を捧げるとし、多くの国々、特にアジア諸国の人々に対してだけでなく、「国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ」たことへの反省は、憲法前文の「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」したことに通じるメッセージでもあった。戦後70年のこの年を、「新たな戦前」としないよう、過去と正面から向き合い、その事実を若い世代にも語り伝え、武力によらない平和な未来を切り拓いていかなければならない。平和の理念と民主主義を押し広めるとともに、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を率先して積極的に推進していくことこそが過去への償いであり、そして未来に誤ち無からしめんとするとしたこれまでの決意を改めて確認すべきである。

以上
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