二元外交は許さない!

時事通信「自民・山崎氏が北京へ出発=9日平壌入り」 2007/01/08-16:47
 自民党の山崎拓前副総裁は8日午後、北朝鮮を訪問するため、成田空港から北京へ向けて出発した。同地を経由して9日に平壌入りする。平壌滞在は5日程度になる見通しで、山崎氏としては北朝鮮政府当局者と会談して、暗礁に乗り上げている核や拉致の問題について解決の糸口を探りたい考えだ。ただ、日本政府とは無関係の訪朝とされ、どこまで成果が上げられるかは不透明だ。
 成田空港で山崎氏は、記者団から今回の訪朝に関してコメントを求められたが、「特にありません」と答えただけだった。山崎氏は7日には、北朝鮮での会談相手について「決まっていないが、宋日昊(日朝国交正常化交渉担当)大使は友人なのでできれば会いたい」と語った。
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新年早々、とんだ二元外交が飛び出した。
宋イルホ氏は、昨年7月、ミサイル連射の直後、日本人記者のインタビューに答えて、「日本の制裁措置は言語道断だ。後に破局的結果を招きかねない」「もっと強い別の対応をせざるを得ない」「日朝関係は最悪の状態を超え、対決局面に入ったといえる。米朝関係より悪化している」と盗人猛々しくまくし立てた人物。この人物と「友人」とは、異様な物言いだ。しかも、宋氏は、同じインタビューで、横田めぐみさんの偽遺骨事件で開き直り、辛ガンス容疑者の引渡しに対しても「嘘を流布する目的を明らかにする必要がある」などと平然と拒絶した。彼など、所詮は独裁国家の細胞の一つに過ぎまい。

山崎氏の二元外交には「前科」がある。平成2004年4月にも中国・大連で、北朝鮮の鄭泰和・日朝国交正常化交渉担当大使(当時)と会談したが、何の成果も挙がらなかった。今回もわざわざ平壌へ行って同レベルの人物と会談したところで、埒が明くはずがない。独裁国家北朝鮮の最高指導者金正日が署名した平壌宣言を平気で反故にする国である。かりに金正日総書記にお目どおりが適ったとしても、安倍官邸が何らのお墨付きも与えていない(どころか、一部報道によれば不信感を露にしている)山崎氏の独断専行に、国益に資する成果が得られようとは子供でも期待しないであろう。

しかも、六カ国協議も流会し、対米関係で行き詰まっている北朝鮮にとって、山崎氏は飛んで火に入る夏の虫(それにしても季節外れ!)になりかねない。つまり、功を焦って不用意に飴玉を持ち出せば、その場は「成果」らしきものにありつけるかもしれないが、その後の日朝関係、国際社会と北朝鮮との関係を複雑なものにしてしまう恐れがある。なぜなら、二度目の核実験が取りざたされる中、我が国は、これまでの拉致・核・ミサイル問題に対する不誠実な対応と相俟ってさらなる厳しい制裁措置を講ずる必要に迫られるであろうし、国際社会としても、国連安保理決議1718で求められている制裁措置を厳格に実行しなければならない。そんな中で、山崎訪朝の「成果」らしきものによって、せっかくの国際協調が水を差されかねないのだ。

さらに複雑なのは、もともと制裁に及び腰だった中国や韓国が、その「成果」らしきものの尻馬に乗って、国際協調にさらなる冷や水を浴びせかける可能性もある。山崎氏が、どういう動機と戦略に基づいて訪朝したのか、帰国後にもきちんと説明する必要がある。たんなるパフォーマンスでなく、米中首脳会談を実現させたキッシンジャーのように本気でやるつもりなら、すべて秘密裏に事を運ぶべきだろう。それとも、安倍外交を撹乱したいという「純粋な」政治的動機なのだろうか。しかし、その行動の波及効果を考えれば、政権与党の幹事長経験者がやるべきことではない。いかなる角度から見ても、じつに愚かな行動だ。こうした一議員の外交ごっこは残念ながら国会審議の対象にすらならないから、なおさらフラストレーションがたまる。

明日は、気を取り直して、防衛省創設記念式典に出席する。防衛省の抱える課題は、文字通り山積している。最近も沖縄の普天間基地移設問題で、官邸と久間防衛庁長官の意向が対立するなど、混乱を来たしている。さきほどテレビで、防衛施設庁による基地対策補助金がとんでもない無駄遣いに消えている実態が報道されていた。ご覧になった方も沢山おられることだろう。25日から始まる通常国会では、省として、国民の信頼に応える重大な責任を担っているという自覚を大いに促したい。
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