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畑が癒やす「万引き被害ですり減った心」農業が居場所を与えてくれた
日経ビジネスオンラインの記事からーーーーーーーーーーーーーーーー
吉田 忠則 日本経済新聞社編集委員
1月下旬、千葉市の郊外に赤坂を訪ねると、作物を寒さから守る白い薄膜のトンネルが畑に帯状に並んでいた。育てているのは小松菜やチンゲンサイ、水菜、ホウレンソウなどだ。
「まだまだ試行錯誤の段階です。トンネルを張っては風に飛ばされ、張っては飛ばされっていうのをくり返してます」。赤坂はそう言って屈託のない笑顔を見せた。
30代半ばの赤坂は、昨年4月にここで畑を借り、農業を始めた。その直前、昨年2月までは亡くなった父親の後を継ぎ、東京都内で中堅チェーンのコンビニを経営していた。
いい思い出のないコンビニ経営
「かつてはチェーンのなかでトップ10に入る優良店舗でした」。まわりには高級ブティックなどが立ち並び、ほかのコンビニが入り込む余地はなく、「一人勝ちの状態が続いていた」という。
長引く景気低迷が、状況を変えた。高級店が撤退し、その後にセブンイレブンやローソンなどの大手チェーンが出店し始めたのだ。本部が提供するオペレーションシステムや品ぞろえに大きく影響されるのがコンビニだ。売り上げが見る間に減り始めた。
「コンビニにはいい思い出は残っていません」。赤坂はそうふり返る。「なんとか利益を出す方法はないのか」。本部に相談すると、「勝てっこない。あきらめてくれ」。対応策をまともに提示してくれることはなかった。
いや、提案はあった。「アルバイトに有給休暇をとらせたら、赤字になる」と相談すると、本部は「あなたが店に出ればいいではないか」。「24時 間、店に出るしかなくなる。いまでも、休みらしい休みはとってない」。人件費を減らすため、バイトの数を大幅に減らしていたからだ。だが、そう言うと、 「こっちだって有給休暇なんてとってない」。
ずっとつき合っている彼女がいるが、家族のだれかが店に出ざるをえないため、結婚式を開くこともできない。そう本部に訴えると、「みんな式なんてあげてませんよ」。身も心も疲れ果てていった。
経営悪化のほかにも、心をすり減らす原因があった。後をたたない万引きだ。
万引き犯は問う。「明日も来ていいですか」
「高校のときから店を手伝っていたので、入ってきた瞬間に目つきでわかる」。そういう客を見つけると、バイトに「やりそうだから、見といて」と指示する。店員が近くにいれば、さすがに商品には手を出しにくい。
困ったのは、これとは別種の客。ものを盗むという意識がなく、「まるで自分の家のようにすっと入って来て、棚のものをとってすっと出て行く」。これは目つきではわからない。
そんな客のひとり、中年女性のエピソードがすさまじい。このときは、たまたま万引きするのを見つけることができたので、問いつめた。
「なんでそういうことするんですか」
「今日、お金持ってないんで」
「これ犯罪ですよ」
「そうなんでしょうねえ」
「警察を呼びますよ」
「わたし、これから仕事なんです」
この回答に赤坂が絶句していると、さらに彼女はこうつけ加えた。
「会社に行くとき、ここしか買う場所がないんで、明日も来ていいですか」
いま思い返しても、寒気をおぼえる出来事もあった。このときの相手は、おそらくは失業中の男性だった。「身分証明書を出しなさい」と求めても、持っていない。カバンを開けると、タオルが1枚入っているだけだった。
警察を呼ぶと、じつは危険な状態だったことがわかった。タオルのなかに、20センチほどもある出刃包丁が隠されていたのだ。もし相手の気持ちが高ぶり、包丁を振り回したら、どうなっていたか。「殺されていたかもしれない」。
詐欺事件に巻き込まれたこともある。元従業員から「タイの金山の話」を持ち込まれ、父親が巨額の借金を負ってしまったのだ。「父は本当にやさしく、あこがれの人だった。あの事件のために寿命を縮めたんです」。元従業員は逮捕された。
「もうコンビニはやめたほうがいい」。そう思い始めたとき、彼女が赤坂に提案した。「生き物が好きなんだから、農業をやってみたら」。コンビニは家族経営だった。「農業も、家族経営の形で始めることができるのでは」。新しい生活が、ぼんやりと見えてきた。
強盗未遂や詐欺事件の後、農業に光明
まず思ったのは、「まったく経験がないのに、いきなり農家で研修するのは難しいんじゃないか」ということだ。そこで、彼女とふたりで農業教室に入ることにした。向かった先は前回、この連載で紹介した、高橋有希が運営する有機栽培の教室だ(2月27日「『勉強大好き!』農業女子式“進化論”」)。
このときの赤坂の反応が面白い。「有機農業は、ぼくみたいに社会になじめない人がやってると思ってました。何となく食べて行ければいい、というノリみたいな」。ところが、ネットで検索すると、農家たちはずっと意欲的だった。「すごく力強い。熱量を感じました」。
扉は開かれた。高橋のもとで、有機栽培を学んだのが1年半。高橋に畑を貸している地主が赤坂にも近くの農地を貸してくれることになり、教室で学びながら作付けの準備を始めることにした。コンビニは直前にやめた。
冒頭に書いたように、栽培も販売も本格的にやるのはまだこれからだ。「野菜の宅配をやりたい」と話すが、そのプランをくわしく書いて、是非を考えるべきときではないだろう。
それよりも、もっと強調しておきたいのは、少なくとも赤坂は以前の仕事よりもずっと明るく希望を語れるようになった点だ。「これからが楽しみ」という表情に曇りはない。
感謝されるうれしさを農業が教えてくれる
例えば、コンビニ時代、客に「お弁当温めますか」と聞いて、「あたりめーだろ」と文句を言われたことがある。「『コンビニ店員のくせに、余計なことを言うな』と思ったんでしょう」。
バイトには純粋な子が多かったという。「それでも社会にはじかれて、擦り切れてうちに来る」。そんなバイトたちと、「ぼくら人として見てもらえてないよね」と話すこともあった。
いまは違う。少しずつ販売を始めているが、「元気に育てた野菜を売って、喜んでもらえるのがうれしい」。いい仕事をすれば、人から感謝されることを知ったのだ。「コンビニ時代、心から『ありがとう』って言ってもらえたことなんて、ないですよ」。
「農業はそんなに甘くない」という常とう句は、ここでは封印したい。とにかく、はじめの一歩は踏み出した。あとは、うまくいくことを祈るばかりだ。そして、「農業をやってよかった」という言葉を、いつかあらためて聞いてみたいと思う。(文中敬称略)
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日経の方もコンビニの経営者のありかたに疑問をもたれてきていると思います。
やはり、小売を志す以上、社会に貢献する存在でありたい。お客様にも「ありがとう」
と言われる存在でいたい。しかし今のコンビニは、食品添加物を使えるだけ使い
配送便を減らし、コスト削減のみ。販売するものに売るものの誇りと、満足感を
与えられない。真面目にやればやるほど本部に嵌められる。
顧客を疑いの目でしか見られない。万引き犯を深追いすれば、刃物で刺される。
この辺りで本当の働きがいを見直してみるべきだろう。
私は、地位保全訴訟で争ったが、その中での本部の姿勢に疑問を持たざるをえなかった。
肝心な、1年前更新前面談の書類を隠したり、契約書の中のほんのわずかな文言を
拡大解釈をし連帯保証で脅したり、加盟店と真摯に対応しようとしない姿勢に自分の
残り10年を託せなかった。裁判官にはっきりとそう申し、事実の公開を宣言した。
ある本部の言動が正しいのであれば、世間に公表しても問題はないだろうと本部に
迫った。来る人に見せるのは良いという言質は取っている。
ブロブに来る人に見ていただくのは、微妙なところなので調整していますが、
裁判の内容をおみせするのは、全く問題はない。
やはり、本部の実態をあきらかにし農業を選んだこの方のように、生き甲斐
働きがいのある人生を選ぶべきではないでしょうか?
本当は、このブロブに来られている方は、コンビニを通して、生きがいのある
人生を歩きたかった方ばかりでしょうが、今の本部にその姿勢はないと思います。