こひそめて あひたきを知る 春の野に さわぐ心の 月夜なるかな
*恋というものは、切ないものですね。それは人を好きになることから始まるが、人はなぜ人を好きになるかわからない。その衝動が、自分の中に起こす苦悩が、甘くも苦くもあり、それに酔うていくここちが、たまらない。
相思うことができれば幸運だが、すれ違ったり、思うようにいかないことの方が多い。そのかなわぬことの苦しみが、また恋というのを狂おしくいいものにする。
実質、恋というのは苦しいのがいいのだ。甘いこともあるが、その甘い一時を、恋しい人と営むために、あらゆることをしてしまうのが、たまらなくよい。
人間はこういう恋をすることができるということを、幸福に思わねばなりませんよ。恋というのは、自己存在の若い時にだけできることだ。実質、霊魂が進化していけば、男も女も別のものになっていく。小さな頃のように、恋に酔うことはできなくなります。
それはそれで、互いに美しい愛が生まれてくるものだが。恋に酔える時は、存分に恋に酔った方がよい。もちろん、バランスはとらねばなりませんが。
恋しい思いを抱き始めて、、会いたいと思う気持ちを知って、春の野辺に、心が騒ぎつつ、月のようなあの人を見ている。
まあ表題の歌はそういう感じです。「月夜」は月のある夜のことではなく、月のことそのものを言い表します。つまりは、月になぞらえられるあの人のことを意味するのです。
こんな感じで、野原で花ばかり見ているあの人を見ていた人も多いでしょう。あの人は美しかったでしょう。形も整っていましたがね、実質、中にいる霊魂の姿がとても美しかったからです。霊魂が澄んで晴れている。あれは女性の特質なのです。
あなたがたはまだ若いから、女性の進化した姿というのを知りません。それはきれいなのですよ。あの人のように、そこに立っているだけで、空気が澄んでいるような気がするのです。それがとても美しい。あんな人を見たら、迷う男はすぐに恋に溺れてしまうでしょう。
人生が狂った人も多い。
女性の美しさというものを侮るからそうなる。進化したその美しさというものは、立派な男でも内心焦るほどのものなのです。
進化すれば恋などはしなくなるが、それに似た汗が流れる。かわいいと思い、愛でなんでもしたくなるのです。
そのように、あなたがたも、かのじょのためになんでもしてしまった。質はちがいますがね。
女性の恐ろしさというものが、身に染みてわかるでしょう。