人の世の あくがれのみか 兜率天 夢詩香
*兜率天は仏教用語で、菩薩が住む世界のことを言います。ですがここでは単に、天国という意味で使っています。
人間はこの世を苦界と見、この世のほかにうまし国があって、そこを天国とか常世とか名付けたりしますが、本当は、神は地獄のような世界をお創りになったことはありません。
この世界に、地獄があるように見えるのは、人間がそこで地獄絵図のようなことをしているからです。
わたしたちの住むところと、人間が住む人類世界は違いますが、しかし死後の世界にも、兜率天に当たるようなところはありませんよ。苦い人も、よい人も、同じ世界に住んでいます。住み分けはありますが、みな、行こうと思えば互いを行き来できるところに住んでいます。
この地球世界に、アメリカと北朝鮮が同時に存在しているのと同じです。
よいことをすれば天国に行き、悪いことをすれば地獄に行くと、昔から言いますが、境地という次元では、それを考えることはできますが、場所という意味では、そういう場所はないのです。あるとしても、それは仮のもの。
ですから、アラブの人たちが信じているような、たくさんの処女と結婚できるというような天国も、ありません。
兜率天は、この世の地獄のような境涯に住んでいる人間が、そこから脱したいあまりに作りだした、幻の世界なのです。どんなにがんばっても、たどり着けるはずのないものです。蜃気楼よりもむなしい、人間の心の中にしか存在しない、虚無に描いた餅です。
天国とは、人間の心が変われば、見えるものです。すばらしい自分の存在の正体に気付き、愛の真実の幸福に気付いた時、すでにこの世界が天国であったことに気付く。それを天国と言います。兜率天と言いたい人は言ってもいいでしょう。
ですから、人間の心が変われば、この地球世界も天国なのです。あまりにも厳しい世界だが、そこを生き抜いていける自分の力のすばらしさを知るとき、あなたがたは不思議な情熱に燃えて、すべてに挑戦していくことでしょう。