こころ模様

人はなぜ生きるのでしょうか。希望、居場所、時間というキーワードから、人生とは何かについて考えていきます。

日本語の古典

2011-04-05 22:07:17 | 読書

高校時代、古典を教えてくれたのはH先生。浪人したときに、捲土重来と書いた葉書をもらった。古典は苦手だった。文法がわからなくて、試験の時はいつもコテンコテンにやられていた。

山口仲美 『日本語の古典』 岩波書店

古事記から春色梅児誉美まで。作品ごとにテーマを設けて、それぞれの面白さをダイジェストで紹介する。読んでいて楽しく、また、本編を読んでみたいなと思わせる巧みな文章さばき。物語の面白さ、ダイナミックスを味わうことができる。


小説家になる方法

2011-03-04 21:28:17 | 読書

副題に「本気で考える人のための創作活動のススメ」とある。清水義範の小説が好きな私は、思わず手に取ってレジに向かったのである。この本を読んでも、それだけで小説家になれるわけではない。そんなことは重々承知の上で、何か一つでもヒントになればと読み進んでいく。

どんなに苦しくても、希望の成就をあきらめないというのは、その人の才能である。(103頁)

そうそう、そうだよな。叩けよ、さらば開かれん。それの心が大事なのだと、独りごちする。

「自分がこれが書きたいんだ」という思いが、ちゃんとある人間の書く物には、人を引きずり込むような力があるのかもしれない。(123頁)

そうそう。問題意識のはっきりしない文章は、読んでいても頭の中に入ってこないもの。思いが大切なのだと改めて確認。

文章指南の本として、得るところが多かった。

清水義範 『小説家になる方法』 ビジネス社 2007年


若者よマルクスを読もう

2011-02-24 21:55:44 | 読書

内田樹さんの本を読むのは、これが初めて。同じ大学の石川康宏との往復書簡という形式。思い切りのいい主張が心地好い。

内田樹×石川康宏(2010) 若者よマルクスを読もう かもがわ出版

 ぼくがマルクスを愛する最大の理由は、マルクスが世の中の仕組みをさくさくと解明してくれたことでも、どうやって階級のない社会を構築するか、その筋道を指し示してくれたことでもなく、マルクスを読むと自分の頭がよくなったような気になるからなんです。

 これは人類学者のクロード・レヴィ=ストロースがどこかで書いていたことなんですけれど、レヴィ=ストロースは論文を書き始める前に、必ず書棚からマルクスの本を取り出して、ぱらぱらと任意の数頁を読むのだそうです。「ルイ・ナポレオンのブリュメール18日」なんかが特にお気に入りらしいんですけれど、マルクスを何頁か読むと、頭の中の霧が晴れるような気がする、と。 僕にもこの感じはよくわかります。マルクスを数頁読むだけで、頭の中を一陣の涼風が吹き抜けるような気がする。(中略)

マルクスはごくの問題を解決してくれない。けれども、マルクスを読むとぼくは自分の問題を自分の手で解決しなければならないということがわかる。

 これがマルクスの「教育的」なところだとぼくは思っています。(37~39頁)

 

 マルクスは「私たちを疎外された労働から解放せよ」と主張したわけではありません。「彼ら(劣悪な労働環境に置かれた労働者)を疎外された労働から解放するのは私たちの仕事だ」と主張したのです。この倫理性の高さゆえにマルクス主義は歴史の風雪に耐えて生き延びることができたのだとぼくは思っています。(152頁)