完成度の高い骨太な作品だ。
テーマの捉え方はもちろん、ビジュアルも音楽も非のうちどころがない傑作。
ドキュメンタリー映画の好きな私には、ダムに沈んだ岐阜県徳山村を撮った「水になった村(写真家の大西暢夫監督作品)」とともに、生涯の記録映画ベストテンに入れたいほどの収穫である。
goo 映画
「水になった村」と重なる部分が多い。
豊かで美しい自然。
その恵みに感謝しながら、慎ましく生きる人々。
先祖から預かった大切な自然&文化遺産を守るためにお互いに助け合う、古きよき共同体の人間模様。
自給自足の生活から生まれる自信と地に足が着いた生き方。
築100年以上の屋敷が取り壊される悲しみ。
仮設住宅や別の土地に移住しても、心は常にふるさとにある・・・。
しかし、水没のため二度と戻ることができない徳山村と、故郷に戻るため再生に力を注ぐ山古志村との差は歴然としている。
「水になった村」を観た後、非常に心が痛んだが、本作からは大いに元気を貰った。
主な登場人物を、山古志を象徴する産業に携わる5組の家族に絞ったのがいい。
彼らは壊滅的な打撃を受けた産業を復興させるだけではなく、新たな人生の創造をめざして果敢に挑戦する。
1.棚田を守る老いた母と娘 。
重機の入れない田に水を引くために、自力で崖を切り開き、270メートルもの重いホースを担いで敷設する上田さん。
苦労の末、やっとチョロチョロ水が落ちてきた時には、彼女らとともに泣いてしまった。
2.会社勤めを辞めて父の跡を継ぐ錦鯉師。
鯉づくりに関して素人同然の石原さんは、幼い日のかすかな記憶を頼りに、父の形見の親鯉から新品種を創り、品評会で三冠王を獲得する。
”錦鯉発祥の地”で生きる意味を見出すには、「父と同様、自然産卵にこだわり、いい鯉が生れると信じることが大切」と語る。DNA恐るべし !!
3.やむを得ず新天地で畜産業に勤しむ親子。
瓦礫に埋もれた死にゆく牛の悲しそうな眼・・・。
五十嵐さんは泣く泣く移住して、畜産の共同経営に挑む。
納骨のため帰郷し、墓の周りで家族だけの盆踊りをするが、「やっぱり山古志はいいなあ」と涙ぐむ。
ふるさとは死ぬまで恋しいのである。
4.強靭な新牛舎を建てる若夫婦、
一方、村に残った関さんは、村人の助けを借りて、耐震性の強い共同牛舎を建設。
妻子とともに子牛の誕生を見守りながら、「”畜産の村”の歴史を次の世代に伝えたい」と話す。
5.ヒマワリで村起こしを企てる女流書道家。
「ここでしか味わえないふるさとの情景を皆に感じさせたい」。
子どもの頃から見てきた、自然の中での暮らしに愛着を持つ関まゆみさん。
阪神大震災のボランティアから貰った、ゴッホの絵の中のヒマワリと同じ種を撒き、花を咲かせ、油を採る。
搾油機から抽出したすずめの涙ほどの油滴を見て、「山古志でやっていく道筋が見えてきた」と感激にむせぶ。
こうした人たちに共通しているのは、災害を乗り越えていくプロセスの中で、自分の役割を確認し、次代の人々に役立ちたいという強い思いに至ることだ。
5組の家族の再生への道程を平行させて描き、少しずつせりあがっていく様子をドラマチックに構成。それぞれが感動的なクライマックスを迎える。
ラストは至福に満ちた時間に浸される。
闘牛、棚田、ヒマワリ畑、錦鯉、火まつり・・・。
伝統と先進が混在した、山古志ならではの楽しみの数々。
なぜ山古志の暮らしは快適なのか?
なぜこの村の人々は魅力的なのか?
その答えは、以下の点にあるのではないだろうか。
住民たちは自然に感謝し、その恵みを最大限に生かすアイデアを持っている。
厳しい風土を克服するために、共同体で協力しあう伝統が築かれている。
1年を通じて祭や行事が多く、それらが文化ややすらぎの 源泉となっている。
つまり、山古志は、極めて人間らしい生活が営める、今どき稀有な土地なのである。
山古志の再生と創造は、都会に住む私の再生と創造にも繋がる。
人は災難にあった時、どうすれば絶望の淵 から立ち上がることができるのか?
人は人の力を借りて蘇ることが可能になるのだ、ということを、本作は教えてくれる。
観た人全てに勇気を与えてくれる”希望の灯”ともいえる必見の傑作である。
★★★★★(★5つで満点)
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テーマの捉え方はもちろん、ビジュアルも音楽も非のうちどころがない傑作。
ドキュメンタリー映画の好きな私には、ダムに沈んだ岐阜県徳山村を撮った「水になった村(写真家の大西暢夫監督作品)」とともに、生涯の記録映画ベストテンに入れたいほどの収穫である。
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「水になった村」と重なる部分が多い。
豊かで美しい自然。
その恵みに感謝しながら、慎ましく生きる人々。
先祖から預かった大切な自然&文化遺産を守るためにお互いに助け合う、古きよき共同体の人間模様。
自給自足の生活から生まれる自信と地に足が着いた生き方。
築100年以上の屋敷が取り壊される悲しみ。
仮設住宅や別の土地に移住しても、心は常にふるさとにある・・・。
しかし、水没のため二度と戻ることができない徳山村と、故郷に戻るため再生に力を注ぐ山古志村との差は歴然としている。
「水になった村」を観た後、非常に心が痛んだが、本作からは大いに元気を貰った。
主な登場人物を、山古志を象徴する産業に携わる5組の家族に絞ったのがいい。
彼らは壊滅的な打撃を受けた産業を復興させるだけではなく、新たな人生の創造をめざして果敢に挑戦する。
1.棚田を守る老いた母と娘 。
重機の入れない田に水を引くために、自力で崖を切り開き、270メートルもの重いホースを担いで敷設する上田さん。
苦労の末、やっとチョロチョロ水が落ちてきた時には、彼女らとともに泣いてしまった。
2.会社勤めを辞めて父の跡を継ぐ錦鯉師。
鯉づくりに関して素人同然の石原さんは、幼い日のかすかな記憶を頼りに、父の形見の親鯉から新品種を創り、品評会で三冠王を獲得する。
”錦鯉発祥の地”で生きる意味を見出すには、「父と同様、自然産卵にこだわり、いい鯉が生れると信じることが大切」と語る。DNA恐るべし !!
3.やむを得ず新天地で畜産業に勤しむ親子。
瓦礫に埋もれた死にゆく牛の悲しそうな眼・・・。
五十嵐さんは泣く泣く移住して、畜産の共同経営に挑む。
納骨のため帰郷し、墓の周りで家族だけの盆踊りをするが、「やっぱり山古志はいいなあ」と涙ぐむ。
ふるさとは死ぬまで恋しいのである。
4.強靭な新牛舎を建てる若夫婦、
一方、村に残った関さんは、村人の助けを借りて、耐震性の強い共同牛舎を建設。
妻子とともに子牛の誕生を見守りながら、「”畜産の村”の歴史を次の世代に伝えたい」と話す。
5.ヒマワリで村起こしを企てる女流書道家。
「ここでしか味わえないふるさとの情景を皆に感じさせたい」。
子どもの頃から見てきた、自然の中での暮らしに愛着を持つ関まゆみさん。
阪神大震災のボランティアから貰った、ゴッホの絵の中のヒマワリと同じ種を撒き、花を咲かせ、油を採る。
搾油機から抽出したすずめの涙ほどの油滴を見て、「山古志でやっていく道筋が見えてきた」と感激にむせぶ。
こうした人たちに共通しているのは、災害を乗り越えていくプロセスの中で、自分の役割を確認し、次代の人々に役立ちたいという強い思いに至ることだ。
5組の家族の再生への道程を平行させて描き、少しずつせりあがっていく様子をドラマチックに構成。それぞれが感動的なクライマックスを迎える。
ラストは至福に満ちた時間に浸される。
闘牛、棚田、ヒマワリ畑、錦鯉、火まつり・・・。
伝統と先進が混在した、山古志ならではの楽しみの数々。
なぜ山古志の暮らしは快適なのか?
なぜこの村の人々は魅力的なのか?
その答えは、以下の点にあるのではないだろうか。
住民たちは自然に感謝し、その恵みを最大限に生かすアイデアを持っている。
厳しい風土を克服するために、共同体で協力しあう伝統が築かれている。
1年を通じて祭や行事が多く、それらが文化ややすらぎの 源泉となっている。
つまり、山古志は、極めて人間らしい生活が営める、今どき稀有な土地なのである。
山古志の再生と創造は、都会に住む私の再生と創造にも繋がる。
人は災難にあった時、どうすれば絶望の淵 から立ち上がることができるのか?
人は人の力を借りて蘇ることが可能になるのだ、ということを、本作は教えてくれる。
観た人全てに勇気を与えてくれる”希望の灯”ともいえる必見の傑作である。
★★★★★(★5つで満点)
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明けましておめでとうございます。
「自主映画制作工房スタジオゆんふぁ映評のページ」の管理人しんです。最近はどちらかというとmixiの方でお世話になっている感じですが、ブログの更新の方も、今年も楽しみにさせていただきますね。
ところで新年早々のお誘いというか、お願いになりますが、当ブログでは「映画ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」という企画を立ち上げてみました。その記事へのリンクをこのコメントに付けております。
是非ともお越しいただき、この10年間のベスト映画をコメント欄に投稿していってください。
無名ブログの企画なのでどれだけエントリーが集まるか判りませんが、なにとぞ盛り上げをお願いいたします。もちろんご興味があればで結構でございます。
それでは、今年もよろしくお願いいたします。