マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

『密告者とその家族』/裏切りの連鎖

2012-09-07 | 映画短評
 愛知国際女性映画祭より パレスチナは、1967年の第3次中東戦争以来、イスラエル軍の占領下に置かれている。分離壁の建設により、自由に動けない住民たち。彼らの中には、貧しいが故にイスラエルに情報を提供して収入を得る「密告者」と呼ばれる人たちがいる。  命がけで身内を裏切る彼らには、斬首の報復が待っている・・・。  本作は、スパイ行為が発覚したため、保護を求めてイスラエルに逃れた一家の日常に密着し . . . 本文を読む

『牧夫、魚を飼う』/少数民族の奮闘

2012-09-05 | 映画短評
愛知国際女性映画祭より 中国西部・新疆地区の少数民族の遊牧民、カザフ族の悲喜を描いた骨太な作品。監督もウルムチに生まれ育った少数民族出身である。10年前に撮ったドキュメンタリー作品を掘り下げ、描ききれなかった部分を肉付けしてドラマ化した。  森林伐採などによる水不足のため、高地を追われる牧夫。定住先では羊を飼うことが出来ず、転職を余儀なくされる。 家の前の湖で魚が獲れることを知り、養魚にチ . . . 本文を読む

私のテヘラン/自由への希求

2012-09-03 | 映画分析
  9月1日~9日まで開催される愛知国際女性映画祭。一年に一度、全国の映画仲間と会えるのも楽しみの一つ。時間を見つけては、食事やお茶をともにし、4日は私主催で居酒屋での懇親会も開く。  『私のテヘラン』は、海外移住をテーマに、現代イランの切実な状況を切り取った問題作だ。  1979年のイスラム革命後、自由を求めて海外移住を模索する人たちが増えている。国内の前衛芸術家たちは 、体制側から表現を制約 . . . 本文を読む