マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

母と暮らせば/亡霊の意義

2016-01-30 | 映画分析
2015年、日本、山田洋次監督 説明過剰な山田監督作品は以前から苦手だった。今回もセリフの多用が目につく。 助産師役の吉永小百合が、仕事をしている場面は皆無。セリフを流すだけ。清く、正しく、美しい老母、伸子…。20歳の息子の母役を演じるのは、流石に無理がある。 どこが過剰なのか? 亡霊の息子、浩二は母に、「(婚約者の町子にとって)僕よりいい男はいないよ」と二度も言う。 上海のおじちゃんが . . . 本文を読む

ヤクザと憲法/善か、悪か?

2016-01-30 | 映画分析
2015年、日本、圡方宏史監督 ドキュメンタリーで実績のある東海テレビのクルーが、大阪の組事務所に密着取材100日間。モザイクなしで、ヤクザの日常を撮った貴重な作品だ。 テレビ放映で話題になり、今回、劇場用に編集。名古屋と東京で公開中。 二度と撮れないだろう、永久に残る名作、といわれている。 怖いもの観たさ以外の理由はない私。 ヤクザは今や絶滅危惧種だ。 法律や条例 . . . 本文を読む

独裁者と小さな孫/回転するダンス

2016-01-28 | 映画分析
2014年、ジョージア・フランス・イギリス・ドイツ、 モフセン・マフマルバフ監督 社会派の気骨あるイランの監督が、現代社会に蔓延しつつある独裁政権とその崩壊後を、ロードムービーの手法で、普遍的な視点から批判している。 前半は、革命後、逃げそびれた大統領が、貧しい国民を銃で脅してボロ服や食料を奪い、変装に変装を重ね、孫を連れて逃亡する様子を、皮肉たっぷりに描く。 傲慢で強欲で、ひとかけらの人情 . . . 本文を読む

完全なるチェック・メイト

2016-01-19 | 映画短評
2015年、アメリカ、エドワード・ズウィック監督  冷戦時代に実在した米国のチェスチャンピオンが、チェス最強国ソ連の王者と世紀の対局に挑む姿を描いた。  トビー・マグワイヤー主演&製作。  代理戦争として政治に利用され、政府の監視下に置かれる2人。  主人公が次第に精神的に追い詰められていく様子を、克明に映し出す。   チェスを知らなくても、十分に面白い。 大写しの表情と、駒を動かす手元 . . . 本文を読む

あの頃、エッフェル塔の下で

2016-01-19 | 映画短評
2015年、フランス、アルノー・デプレシャン監督、 マチュー・アマルリック主演。ほろ苦い青春時代の恋の思い出を描いた、いかにもフランス的な映画。 3部構成だが、それぞれの関係性は濃密ではなく、それとなく匂わせているだけ。  しかし、伏線になっているような気にさせるところが粋だ。  だらだらと遠距離恋愛が続き、眠気と戦うことになる。 自己中心的な2人なので、浮気も仕放題。 共感できない . . . 本文を読む

『ひつじ村の兄弟』 /カインとアベル?

2016-01-19 | 映画分析
2015年 アイスランド、デンマーク/グリームル・ハゥコーナルソン監督 昨年度カンヌ映画祭、ある視点部門グランプリ受賞作品。 最近、本作の舞台であるアイスランドを訪れた知人は「日出ずる国、日本に帰ります。極夜は沢山です」と、SNSに書き込んだ。 神話の世界のようなロケーション。まさに地の果て。無限に広がる灰色の空間…。 1年中雪や氷が身近にあり、夏には昼が、冬には夜が長くなる。 広 . . . 本文を読む