マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

ジャスミンの花開く/歴史のメタファー

2006-05-22 | 映画分析
 眼鏡をかけたチャン・ツィイーが、雷雨の中、路上で苦しみながら1人で出産する・・・。 延々と続く衝撃的なシーン。その迫真の演技には誰もが感動するだろう。 ジャスミンの花開く   観ながら、キェシロフスキ監督の遺稿による映画「美しき運命の傷痕」を思い浮かべていた。 共通点は、嫉妬により狂っていく女性の人生。  「ジャスミン・・・」は三世代の女性の、「美しき・・・」は三姉妹の、それぞれの生き . . . 本文を読む

マンダレイ/ぬるま湯が好き?

2006-05-14 | 映画分析
最も好きな映画作家の一人、ラース・フォン・トリアーの、「アメリカ」3部作の2作目。  フェミニズムの視点で批評してみよう。 マンダレイ マンダレイという、アメリカ・アラバマ州の大農園にたどり着いたグレース。そこでは、70年前に廃止されたはずの奴隷制度が未だに生きていた。彼女は懸命にそれを廃止しようとするが、その縛りはなぜか黒人たちが望んで維持されていたのだった。  「アメリカでは、まだ黒人を解 . . . 本文を読む

アダン/南への誘い

2006-05-12 | 映画分析
実在した孤高の日本画家、田中一村の、求道者のような激しい生き方を描いた秀作。監督は「みすず」「HAZAN」などの五十嵐匠。 アダン アダンとは、一村が好んだモチーフの南国のフルーツ。パイナップルに似た大きな赤い実をつけるが、食べられない。自由で大らかな南国の象徴であり、一村が幻想する少女の名前でもある。 家族のほとんどが結核で亡くなり、姉と2人残され、自身も結核を病む一村。 あまり . . . 本文を読む