マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

あおげば尊し/父の復権 

2006-03-29 | 映画分析
 ゆれ動く不安定な画面、聞き取りにくい音声、空きショットの多用・・・。いかにも何かを期待させる演出だ。教師としての信念や確信の持てない中年男性の苦悩を描いた秀作になるはずだった。 あおげば尊し  しかし、終局で一挙に凡作になってしまった。  「無傷で有能な男性主体」と「家族の一体」という、家父長制社会のイデオロギーを物語の底流に据えていることが暴露されたのだから。  その傾向は冒頭から見え隠れ . . . 本文を読む

ブロークバック・マウンテン/二重の哀しみ

2006-03-21 | 映画分析
 ラブストーリーは好まないが、本作の質の高さに引き込まれた。同じように”差別(人種VS.同性愛)”をテーマにしてアカデミー賞の作品賞を争った、都会的で動的な「クラッシュ」とは対照的に、牧歌的な風景が醸しだす大らかさが、この長くて切ない物語を優しく包み込んでいる。 ブロークバック・マウンテン  カウボーイはアメリカにおける「男らしさ」の象徴といわれている。なかでも保守的な西部や南部では、男性た . . . 本文を読む

ホテル・ルワンダ/イメージの力 

2006-03-08 | 映画分析
力作であり、必見である。観た後、しばらくは言葉を失った。  同じ日に 「ロード・オブ・ウオー」を観たが、この二つの作品がみごとに繋がり、問題の根の深さに愕然とした。 ホテル・ルワンダ  「ホテル・ルワンダ」では、主人公ポールが、体制派のフツ族でありながら、反体制派のツチ族を救うという英雄的な行為に焦点が当てられ、”悪玉”としてフツ族の民兵が登場する。  観客は被害者であるツチ族と同化して、 . . . 本文を読む