マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

千年の愉楽/必然の両価性

2013-04-28 | 映画分析
 低予算のため、時代考証に難がある、と言う人も多いが、作品の世界観に魅せられ、そうしたことが全く気にならずにのめり込んで観ていた。  中本の男たちの得も言われぬ美しさと、オリュウの地母神のようなパワーに打ちのめされたのである。  「路地」は人間界のメタファーだ。欲望と暴力、差別など が渦巻く迷路。曲がりくねった細い坂道は、誰もが辿る苦難の人生を表している。  坂の最高地点で暮らす産婆のオリュウと . . . 本文を読む

ザ・マスター/方舟の鳩

2013-04-27 | 映画分析
  第2次世界大戦の帰還兵フレディと「ザ・マスター」と呼ばれる新興宗教の教祖トッドは、偶然の出会いにしてはあまりにも強い絆で結ばれている。なぜか?  ラスト近くでトッドは「前世で、僕たちは戦場で伝書鳩を放ったところ、2羽だけ帰ってきた」と言う。  旧約聖書のノアの方舟では、放った鳩が一度目は戻ってきたが、二度目は戻ってこなかった。トッドは伝書鳩を自分たちに置き換え、”前世から戦友として強く結 . . . 本文を読む