マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

フラガール/場所を巡って            

2006-09-30 | 映画分析
 冒頭、斜めの構図が提示される。  少女が2人、将来への不安を語り、ボタ山から斜めに滑り降りる。  集会所の「一山一家」の額が傾き、炭坑が斜陽産業であることが分かる。 窓、戸、カメラのファインダーなどから、のぞき込むシーンが多用される。 本作は、場所=境界を巡る物語である。 フラガール - goo 映画   フラダンスのレッスン場、フラダンス教師の家、集会所、列車などの窓を 通し . . . 本文を読む

グエムル 漢江の怪物 /母殺しの系譜

2006-09-24 | 映画分析
  ミスリードに次ぐミスリードで、脱中心化を図る手法。大いに政治的メッセージを感じる秀作だが、フェミニズムの視点からも読み解くことができる。 本作の登場人物はすべて、母が不在だ。グエムル(怪物)は、不在の母=女性性のメタファーである。 グエムル 漢江の怪物 フランスの抵抗詩人にして小説家ルイ・アラゴンは、彼の小説『パリの農夫』の中で、 「女は火の中に、強いものの中に、弱いものの中にい . . . 本文を読む

あいち国際女性映画祭2006 2本

2006-09-07 | 映画短評
あいち国際女性映画祭  作品紹介 ①「三池終わらない炭鉱の物語」」★★★★(★5つで満点)  女性たちの働く姿、団結の様子をもっと観たかった。 「向坂塾」に行かなければ良かった、と、団結が崩されていく惨めさを、学習のせいにする女性がいたが、その一方で、事故後の女性たちによる家族会の結成に支えられた、とする発言があった。 この2つの要素は、根底で結びついているはずだ。 塾で団 . . . 本文を読む

2006年度前半期 ベストシネマ

2006-09-06 | 映画分析
・ 日本映画ベスト3 「 ヨコハマメリー」  白塗りの顔とユニークな衣装で飾られた、彼女の人生の空白の部分を想像しながら観ていた。  観客それぞれに、シナリオを作る快楽を与えてくれる希有な作品。   「ゆれる」  人間関係のありようをカインとアベルの物語に重ねて描いた。   多様な解釈ができて面白い。  心情を繊細に表現する小道具の使い方の妙。  完成度の高さは抜群だ。  「三年身籠も . . . 本文を読む