マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

海街diary/反復可能性

2015-07-12 | 映画分析
2015年 日本 是枝裕和監督 小津作品を彷彿させる美しい姉妹の物語。 3人姉妹の中に突然飛び込んできた異母妹によって、不在の両親をめぐる愛憎が次第に鮮明にる。 そのプロセスが、鎌倉の古い屋敷と四季の風物詩を舞台に、俯瞰の多いカットで緩やかに描かれる。 葬儀に始まり、葬儀で終わる。 途中にも法要があり、極楽寺のアジサイや、サクラのトンネルが死者からのメッセージを伝えている。 「死を意識 . . . 本文を読む

アリスのままで/「死」と「詩」

2015-07-11 | 映画分析
2014年 アメリカ リチャード・グラッツアー&ウォッシュ・ウェストモアランド監督 主人公である50歳の言語学者アリスは、若年性アルツハイマー患者だ。 この病気は、早期で知性的な人ほど進行が速いという。 他方、75歳以上の認知症患者は3.5人に1人の割合。そのほとんどが アルツハイマーである。 他人事ではない。 言語の研究を生業としている人が、徐々に言語を失い、ついには人間の尊厳 . . . 本文を読む

沖縄 うりずんの雨/差別の構造

2015-07-06 | 映画分析
2015年 日本 ジャン・ユンカーマン監督 まさに沖縄の近現代史! この1本を観れば、その全てが分かる。 内容の重さに、うなってしまった。 数々の本を読み、映画を観、現地を訪れ、少しは分かっていたはずの沖縄。 本作は、私の貧弱な沖縄観を何倍も深化させてくれた。 『映画 日本国憲法』『チョムスキー9.11』などで知られるアメリカ人監督、ジャン・ユンカーマンが、戦後70年の私たちに問 . . . 本文を読む