マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

ある子供/亀裂の効果

2006-01-26 | 映画分析
 日本の若者にも通じる、大人になりきれない”子供”を、ドキュメンタリータッチで描いた力作。手持ちカメラ、アングル、音声、小道具などを効果的に用いて、深読みのできる作品に仕上げてある。スリリングな先の読めない展開もすばらしい。 ある子供 (ネタバレ注意!)  20歳の男性ブリュノは,幼いころから母に愛された記憶がない。そのため母とのホットな関係を諦めきれずに成長した”子供 ”である。母との精神的な . . . 本文を読む

三年身籠る/戦略のまなざし

2006-01-16 | 映画分析
 女性の身体(妊婦)に焦点を当てて、伝統的な価値観を見直そうという大胆な試みが興味深い。個性派女優・唯野未歩子の原作・脚本・監督(初)作品。女性スタッフを数多く採用し、女性監督ならではの斬新な視点がきらめく秀作だ。 三年身籠る  冒頭、霧の中で道路を掃く箒の音だけが聞こえる。次第に霧が晴れて、主人公である9か月の妊婦・冬子が 後ずさりしながら掃除する姿が映し出される。  掃いても掃いても、振り . . . 本文を読む

2005年度映画ベスト10

2006-01-06 | 2005年度映画ベスト10
2005年に劇場・ホール・試写室で鑑賞した136本の中で、 日本映画と外国映画それぞれベスト10を選んでみました。 [日本映画] ① 埋もれ木 最も好きな監督の一人、小栗康平の作品。”物語は痕跡の上に築かれ、イメージとして 生起する。つまり、物語のポイントは筋にあるのではなく、さまざまな要素の力の連携と拮抗の状態=構図にある”という物語の論理を映像化。絵や風景などが内包する「物語性」をもア . . . 本文を読む