(ネタバレ注意!!)傷を負わせた権力者と傷をつけられた一市民との戦いの物語。本作のテーマは、「自己確認のプロセス」である。
人は、自己を確認するとき、必ず他者を必要とする。自分は他者にとってどんな存在であるのか 、他者との差異化を必然的に行う。自分の存在を証明することは、自分のイメージが他者の場所で”傷跡”を刻みつけられ、帰ってくることなのだ。
主人公の鈴木は、娘の遥が権力者の息子であ . . . 本文を読む
(ネタバレ注意!!)
本作は徹底してトム・クルーズが演じる主人公=弱者であるレイの視線で描かれている。わが身とわが子だけを守り通す、アンチ・ヒーロー的な彼の行動は、ヘブライ語の「スミカルカ=サバイバルの知恵、賢明さ(7月16日付朝日新聞参照)」に基づいている。つまり、レイは、監督の出自とも関係がある、ホロコーストを生き延びたユダヤ人の象徴だ。
本作のテーマは「人間の英知と生命力」である。
. . . 本文を読む
(ネタバレ注意!!)ボクシングと詩には共通点がある。だから主人公のボクシングトレーナー、フランキーは、ボクシングとともに、同郷のアイルランド詩人、イエーツの作品をこよなく愛する。本作のテーマは“言葉のパラドックス”だ。
フランキーは言う。「ボクシングは理屈じゃない。人の考えの逆をいくのだ」と。なるほど、ボクシングは自ら痛みを求めるスポーツだし、攻守の際には通常の考えとは逆の方向に動くものらし . . . 本文を読む