2012年、韓国、ホン・サンス監督
言語は、それを書いたり口から発せられたりした瞬間から1人歩きする。本人の意図と受け手の解釈との間に裂け目が生じ、オリジナル性は失われ、他者に委ねられるからだ。
とりわけ書き言葉は、本人の在不在に関わらず(死後も)、他者の眼に触れるため、多様な解釈・引用・接ぎ木などによって、無限に新たな意味(差異)を獲得・創出することができる。
本作で映画学校の . . . 本文を読む
2013年、日本、降旗康男監督
我が国の右傾化が話題になる昨今、「東宝」というメジャーな映画会社により、反戦メッセージ満載の本作が製作されたことは賞賛に値するといえよう。
しかし、現存者の自伝映画は、本人に対するリスペクトもあってか、美化されがちだ。川本三郎の『マイ・バック・ページ』もそんな傾向があり、私は評価していない。
日本を代表する舞台美術家の一人、 妹尾河童(1930年生まれ . . . 本文を読む
2012年、イギリス、ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督
あまりにもステレオタイプで、予定調和とご都合主義丸出しの退屈な作品だ。俳優がテレンス・スタンプ&ヴァネッサ・レッドグレイブと豪華なので、もっと深みがあるのかと期待していたが、単純なお涙頂戴ものに過ぎなかった。
老人の音楽もの映画といえば、アマチュアでは『白百合クラブ東京に行く』や『ヤング@ハート』など、プロでは『ブエナ・ビスタ・ . . . 本文を読む
2012年、フランス・エストニア・ベルギー、イルマルラーグ監督
「老い」をテーマに据えた、シリアスな作品である。85歳のジャンヌ・モローが、金持ちの我が儘かつ意地悪ばあさんを過剰なまでに演じている。いつまで経っても女を失わず、生々しいありように驚愕する。
対する世話役の50代の家政婦は、美しく慎ましやかで大変真面目。
噛み合わない2人を繋ぐのは、近所にあるカフェの経営者。彼はこの老婦人 . . . 本文を読む