マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

はじまりのみち/非戦メッセージ

2013-06-24 | 映画分析
2013年 日本 原恵一監督  伝記映画を一代記としてではなく、ある期間に集約して表現するという本作の手法は、スピルバーグ監督の近作『リンカーン』を想起させる。戦時中、失意のうちに帰郷した木下恵介監督の数日間のエピソードを丹念に描くことで、その人柄や思想、家庭、時代背景などを浮き彫りにする仕掛けである。  しかし、シンプルさゆえに端正すぎる仕上がりとなり、物足りなさが残る。上映時間の2割以上を . . . 本文を読む

愛さえあれば/素の大切さ

2013-06-20 | 映画分析
 2012年 デンマーク/監督 スサンネ・ビア  デンマークのシリアスドラマの鬼才スサンネ・ビアが、イタリア・ソレントを舞台に大人のためのラブコメディを作った。  原題は『坊主のヘアドレッサー』。がん治療で頭髪が抜け、ヘアーウィッグが手放せない女性美容師が主役だけに、常に死の影がつきまとう辛口の内容だ。  「素のままであること=坊主」と「表面を整えること=ヘアドレッサー」 という2つの矛盾を生 . . . 本文を読む

ブルーノのしあわせガイド/古典の効用

2013-06-10 | 映画分析
   観ている間中幸福感に浸れる数少ない作品で、心が和み元気がもらえる。とかく殺伐とした現代にあって、束の間とはいえ、ほんわか気分になれるのもいいものだ。  ある日突然、「貴男の息子を預かって」と告げられ、15歳のルカと同居するはめになった元高校教師の独身ゴーストライター&家庭教師・ブルーノ。ルカの母親は「父親であることは伏せておいて」と言い、赴任先のマリに旅立ってしまう。 戸惑いながらも . . . 本文を読む