テーマは、原題『the sea inside(内なる海)』からも分かるように、“イメージ”のあり方である。
「今日は海が見えなくて残念ね」「いや、目をつぶれば見えるから十分・・・」
主人公のラモンは、かつては水夫として世界中を旅して回っていたが、25歳の時、海の事故で四肢麻痺の障害を負った。以来、部屋の窓から意識を外の世界に飛ばす時だけ自由を獲得する日々。本作は、28年間も寝たきりの生活を . . . 本文を読む
圧倒的なロックのボリュームと監督でもある主人公の存在感に魅了された。
男~女(両性具有)~男へと、幻想である愛の片割れを求めてさすらう悲しい人生。
だが、絶望の果てに自らが神となって人を許し、救済されることで、観客自身も救われる。
ありのままの自分をさらけ出すラストの明るさ。
ここでは、境界は二つのものを非並行的進化に巻き込み、どちらが相手を追っているのか、そして、どのような言葉が待っ . . . 本文を読む
不自然な不在を抱えた二つの家族の再生へのプロセスを、省略の効いた幻想的な影像と驚愕のラスト・シーンで丁寧に描いている。
長い不在を、陰の中に埋没してひっそりと息を潜めながら生きている彼ら。それぞれに思う人の絵を描いたり、野菜作りに子育てを重ねたり、新しい祭りを企画したり、身代わり猿を作ったり、形見の下駄を履いたりして寂しさに耐えている。
ある日、一方の家族は不在が確定し、もう一方は不在 . . . 本文を読む
(ネタバレ注意!!) テーマは、タイトルの「約束」。
「約束」とは何か?
「約束」とは、お互いに自分を信じてくれるように要求しあう行為である。だが、未来に起こるできごとなので、遂行できるかどうかは予測不可能。神に委ねるしかない一種の「信仰」のようなものだ。そこにあるのはただただ「信頼」のみ。経済の論理が伴う「契約」とは違うのである。
物語に入ろう。マチルドの婚約者マネクが、出征先で消息不明 . . . 本文を読む
主人公は、言葉の違う外国人男性と、言葉を発せず読み書きもできない魔女的存在の女性。
愛し合う2人。男は瀕死の床にあって、「水がほしい」というが、女はその言葉の意味が分からず、なすすべもなく男は死んでしまう。
ここに重要なテーマがある。
つまり、概念や形(言葉)の中に吸収しきれない非概念的なもの(声にならない叫びやうめきのようなもの)を徹底的に重視し、概念的なものや形相的なものを批判してい . . . 本文を読む
ピナ・バウシュの激しいダンスに始まり、ゆるやかなテンポのダンスで終わる。これは、物語のテーマである”天国と地獄の中間にあるこの世は悲哀に満ちているが、人間はそれを運命として捉え、受容して生きていかなければならない。人間にできる唯一のことは、ただ黙って優しい眼差しで見守ることだけだ”ということを表現している。
母の看護を15年間も続けた看護師のベニグノは、文字通り母子密着の至福の時を独占し続 . . . 本文を読む