(ネタバレ注意!)映画化は難しいといわれている十字軍を舞台にした一大スペクタクルだが、愛や平和について問題提起する人間ドラマとしても見応えがある。
十字軍は1095年、キリスト教ヨーロッパに於いて、法王ウルバン2世の要請により結成された。キリスト教徒およびキリストの予言者であるマホメットの教えを守るイスラム教徒の聖地エルサレムを、アラブ人から奪還するのが目的で、約200 年間、第八次遠征まで . . . 本文を読む
夫と姑と娘の4人暮らしの紅光は、食肉工場の検査員として働いているが、娘はそんな母親の仕事を嫌っている。
一方、夫は会社を解雇されてしまうが、それをなかなか家族に言い出せない。紅光の作った弁当を持って、当てもなく自転車で街へ出かける。
紅光は夫の様子を疑い、娘とも溝ができてしまう。そんな中、娘と姑に恋人ができて…。
冒頭、余りにも残酷な豚の殺戮のシーンがこれでもかという程続くが、その後の . . . 本文を読む
ボスニアとセルビアの紛争というよりは、国連防備軍の不甲斐なさを告発した作品、という印象を受けた。
“公に認められた殺人”という戦争の本質を、室内劇のような作風で丁寧に描いていて秀逸。「ブラックホークダウン」のような派手さはなくとも、十分に戦争の非情さ、虚しさが伝わってくる。
地雷が仕掛けられているので身動きが出来ない状況は、ある意味でユーモラスな設定だが、だからこそ、ことの重大さを我が身に . . . 本文を読む
信者と彼らの追放を願う市民との人情あふれるふれあいが面白い。彼らには行き場所がないから、オウム真理教の中だけでしか暮らしていけないし、尊師は今も大きな存在なのだ。
「宗教だから、修行ということなら信ずるままに何でもやる」と言い切る彼ら。
そうした妄信はオウムに限らず多くの宗教にみられるが、恐ろしいことだ。
オウムのような殺人ではなくても、さまざまな方面に進出して社会悪を噴出させたりして・ . . . 本文を読む
テーマは”言葉”であるが、作品が訴えているのは、人間にとって重要なのは”言葉ではなく、心で感じとること”。
初めの方のシーンで、コミュニストであるチリの世界的な詩人パブロ・ネルーダが、主人公の郵便配達夫マリオに「詩を説明するのは馬鹿げている」と言う。言葉を限界まで省略した詩は、それを読む時、”行間にあふれている詩人の思いをどのように感じとるか”ということが大切だ、と言っているのだ。
マリ . . . 本文を読む
これは、壮大な「自分探し」の物語である。
人間は生来、さまざまな段階を踏まないと独り立ちできない宿命を背負っている。即ち、乳幼時期には「母」を鏡(モデル)として自己像を形成し、思春期には「母」との闘争~乗り超えを経て「自我」を確立するのだ。
主人公の双子の姉妹は、生後間もなく母に去られ、8才の時に、育ての親である祖母を亡くして施設へ送られる。2人はお互いを母親代わりにしながら成長せざるを得 . . . 本文を読む
夫婦とは、家族とは・・・といった、現代人が抱えている問題を提起し、シリアスでかつおかしくて、ユニークな内容。
しかし、ブラックコメデイとはいえ 、主人公の大塚寧々以外の女性たちのオーバーな演技が鼻につく。妊娠を人間関係や金銭問題の武器にしているのも許せない。
同じ日に、〔イタリア映画を観る会〕で、ロッセリーニの「ストロンボリ」を観たが、前作の「アモーレ」と同様、“妊娠は(大いなる存在=神 . . . 本文を読む
劇場公開映画の中から日本映画・外国映画各5本、読み解きの面白さで選んでみた。
・日本映画
「誰も知らない」
余分なものを削ぎ落とし、子供の視点で虐待を検証している。母の不在を受容することで、逆にユートピアを構築しようとする子供たち。アウトロー故に既成概念とは異なる彼らの行動は、大人たちをワクワクさせてくれる。
「ヴァイブレータ」
物書きの女と話好きな男。「言葉」は普遍的なものにならない . . . 本文を読む