2015年、イギリス、トム・フーバー監督
夫婦愛というか、人間愛というか、究極の愛というか?
夫が女性として生きたいと願った時、妻はすべてを受け入れる…。
今から80年以上前、命をかけて世界初の性別適合手術に踏み切った"リリー"という女性の実話に基づく物語。
先日、タイでニューハーフショーの鑑賞を初体験したばかり。
余りにも美しくエレガントな彼女たちに、すっかり魅せられてしまった。
興 . . . 本文を読む
2013年、フランス、マルタン・プロヴォ監督
観ていてしんどい。
だが、監督の狙いはそこにある。観客が共感を得られない主人公こそ、最高の華なのだ。
ゴツゴツとひっかかって、考え込ませる作品、映画好きにはたまらない。
1946年にデビューした実在の作家ヴィオレットは、私生児で不美人。もてないし、貧乏で、性格も悪い。
母を憎み、自分を嫌い、世間を恨み続けている。
対して、流行作家のポーヴォワー . . . 本文を読む
2015年、日本、山田洋次監督
説明過剰な山田監督作品は以前から苦手だった。今回もセリフの多用が目につく。
助産師役の吉永小百合が、仕事をしている場面は皆無。セリフを流すだけ。清く、正しく、美しい老母、伸子…。20歳の息子の母役を演じるのは、流石に無理がある。
どこが過剰なのか?
亡霊の息子、浩二は母に、「(婚約者の町子にとって)僕よりいい男はいないよ」と二度も言う。
上海のおじちゃんが . . . 本文を読む
2015年、日本、圡方宏史監督
ドキュメンタリーで実績のある東海テレビのクルーが、大阪の組事務所に密着取材100日間。モザイクなしで、ヤクザの日常を撮った貴重な作品だ。
テレビ放映で話題になり、今回、劇場用に編集。名古屋と東京で公開中。
二度と撮れないだろう、永久に残る名作、といわれている。
怖いもの観たさ以外の理由はない私。
ヤクザは今や絶滅危惧種だ。
法律や条例 . . . 本文を読む
2014年、ジョージア・フランス・イギリス・ドイツ、
モフセン・マフマルバフ監督
社会派の気骨あるイランの監督が、現代社会に蔓延しつつある独裁政権とその崩壊後を、ロードムービーの手法で、普遍的な視点から批判している。
前半は、革命後、逃げそびれた大統領が、貧しい国民を銃で脅してボロ服や食料を奪い、変装に変装を重ね、孫を連れて逃亡する様子を、皮肉たっぷりに描く。
傲慢で強欲で、ひとかけらの人情 . . . 本文を読む
2015年、アメリカ、エドワード・ズウィック監督
冷戦時代に実在した米国のチェスチャンピオンが、チェス最強国ソ連の王者と世紀の対局に挑む姿を描いた。
トビー・マグワイヤー主演&製作。
代理戦争として政治に利用され、政府の監視下に置かれる2人。
主人公が次第に精神的に追い詰められていく様子を、克明に映し出す。
チェスを知らなくても、十分に面白い。
大写しの表情と、駒を動かす手元 . . . 本文を読む
2015年、フランス、アルノー・デプレシャン監督、
マチュー・アマルリック主演。ほろ苦い青春時代の恋の思い出を描いた、いかにもフランス的な映画。
3部構成だが、それぞれの関係性は濃密ではなく、それとなく匂わせているだけ。
しかし、伏線になっているような気にさせるところが粋だ。
だらだらと遠距離恋愛が続き、眠気と戦うことになる。
自己中心的な2人なので、浮気も仕放題。
共感できない . . . 本文を読む
2015年 アイスランド、デンマーク/グリームル・ハゥコーナルソン監督
昨年度カンヌ映画祭、ある視点部門グランプリ受賞作品。
最近、本作の舞台であるアイスランドを訪れた知人は「日出ずる国、日本に帰ります。極夜は沢山です」と、SNSに書き込んだ。
神話の世界のようなロケーション。まさに地の果て。無限に広がる灰色の空間…。
1年中雪や氷が身近にあり、夏には昼が、冬には夜が長くなる。
広 . . . 本文を読む
2015年 日本 是枝裕和監督
小津作品を彷彿させる美しい姉妹の物語。
3人姉妹の中に突然飛び込んできた異母妹によって、不在の両親をめぐる愛憎が次第に鮮明にる。
そのプロセスが、鎌倉の古い屋敷と四季の風物詩を舞台に、俯瞰の多いカットで緩やかに描かれる。
葬儀に始まり、葬儀で終わる。
途中にも法要があり、極楽寺のアジサイや、サクラのトンネルが死者からのメッセージを伝えている。
「死を意識 . . . 本文を読む
2014年 アメリカ リチャード・グラッツアー&ウォッシュ・ウェストモアランド監督
主人公である50歳の言語学者アリスは、若年性アルツハイマー患者だ。
この病気は、早期で知性的な人ほど進行が速いという。
他方、75歳以上の認知症患者は3.5人に1人の割合。そのほとんどが
アルツハイマーである。
他人事ではない。
言語の研究を生業としている人が、徐々に言語を失い、ついには人間の尊厳 . . . 本文を読む
2015年 日本 ジャン・ユンカーマン監督
まさに沖縄の近現代史!
この1本を観れば、その全てが分かる。
内容の重さに、うなってしまった。
数々の本を読み、映画を観、現地を訪れ、少しは分かっていたはずの沖縄。
本作は、私の貧弱な沖縄観を何倍も深化させてくれた。
『映画 日本国憲法』『チョムスキー9.11』などで知られるアメリカ人監督、ジャン・ユンカーマンが、戦後70年の私たちに問 . . . 本文を読む
2014年 ベルギー・フランス・イタリア ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督
車道、玄関扉、車のドア、窓、フェンス…。
障壁物の多用が、他者との関係性の難しさを表している。
本作は、自己と他者との関わりを徹底的に抉り出し、人はどうあるべきかを考えさせてくれる。
長期の鬱病から復帰した金曜日、「社員の投票で貴女の解雇が決まった」と告げられたサンドラ。
生活のために働き続け . . . 本文を読む
2014年 日本 武重邦夫監督
*友人の映画監督・武重邦夫(故今村昌平監督の愛弟子)が、素敵な記録映画を作った。名古屋市在住の96歳の女性が主人公である。
まるでドラマのような、波瀾万丈の人世。
こんなに面白いとは・・・。タイトルから想像していた内容とは大違いだ。
大正7(1918)年生まれ。昭和17(1942)年、名古屋市初の保健婦(現在の呼称は保健師)になり、96歳の今も、専 . . . 本文を読む
2014年 日本 似内千晶監督
友人の映画監督・武重邦夫が3.11後の福島をテーマにした骨太のドラマを作った。
福島県北部、宮城県に近い中通りに位置する宿場町、桑折(こおり)の桃農家の話である。原作者は同町出身で、自分の家族と故郷をモデルに書き上げた。
単なるご当地映画ではない。東日本大震災や原発事故災害の悲惨さを前面に出すのではなく、背景にそれらの影響が垣間見える青春映画である。 . . . 本文を読む
2013年、日本、外山文治 監督
高齢者が主人公の作品が目白押しである。本作は老いや死を背景にした、少しシリアスなラブコメディ。脚本・監督は高齢化社会をテーマにした短編部門で数々の賞に輝いた32歳の外山文治、長編デビュー作だ。吉行和子、山本学、宝田明らが熱演している。
私事になるが、より多くの同世代の考え方や行動が知りたいと思い、6年前、シニア対象の市民大学に2年間在籍した。そこで体験 . . . 本文を読む