クラシック音楽のひとりごと

今まで聴いてきたレコードやCDについて綴っていきます。Doblog休止以来、3年ぶりに更新してみます。

モーツァルトのピアノ協奏曲第23番イ長調K488 ハイドシェック/ヴァンデルノート盤

2005年10月18日 05時36分36秒 | 協奏曲
西条祭もすんで、深まりゆく秋を感じています。
今日の夕暮れも全く綺麗だった。
真っ暗になる直前の10分間は、黄金の時間でありました。

深まる秋には、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番イ長調K.488。

今日は、エリック・ハイドシェックのピアノ、アンドレ・ヴァンデルノート指揮パリ音楽院管弦楽団の演奏で。1962年録音のEMI盤。
1300円盤として、随分若い頃世話になったセラフィム盤のLPで聴いたものだったが、10年ほど前にCD2枚組になったので買い直したもの。
20、21、23、25、27番の5曲を収めている。

ハイドシェックはこの録音当時、26歳の若さ。
この若さで素晴らしいK.488を聴かせてくれる。すごいピアニストだと思う。

ひと頃、盛んに来日しては、話題になったピアニストでもある。愛媛県の宇和島市にもやって来て演奏会を開いたりもしていた(ボクは行っていないが)。

第1楽章のアレグロ。序奏からして速い。まさにアレグロ、快速なテンポで管弦楽が奏でる。その速さの感じは、新幹線に乗っているときの、外の風景がどんどん飛んでゆくあの感覚に似ている。何かに急かされているような印象を受ける。ただ、このテンポ感に慣れてしまうと、一種快感でもある。
ハイドシェックのピアノが登場しても、その速さの感覚は同じ。どんどん飛ばしてゆく。ただ、ハイドシェックのテンポは伸縮自在で、天衣無縫。速いところは大変速く、遅いところではかなり遅く、速度の差が大きい。ゆったりとロマンティックに歌うところや、情感豊かに奏でるところもあれば、サッサと飛ばしてしまうところもあって、聴いていてたいそう面白い。
若武者が颯爽と演奏している印象。悪く言えば好き勝手に弾いているようなところがある。
ヴァンデルノート指揮のパリ音楽院管は、ニュアンス豊かで繊細な管弦楽を聴かせる。ただし、アンサンブルが怪しい。もっとも、この怪しさが微妙な雰囲気を生んで、協奏曲としては聴くには結構面白いから不思議でもある。

第2楽章は、これはモーツァルトの書いた「秋のアダージョ」であり、「秋のもの想い」だと思う。テンポはやや速め。沈思黙考と云うよりは、淡々と哀しみを吐露してゆく感じの演奏になっている。情緒纏綿たる演奏ではなく、感傷があまりべとつかないのが良い。特にピアノのソロがデリカシーに満ちていて、美しい。ハイドシェックの音色はクールで透明感があるのに、エッジがやや丸く鋭利ではない。いかにもモーツァルト向きだと思う。管弦楽も、第1楽章同様、ニュアンス豊かで雰囲気たっぷりでよい。

終楽章のアレグロ・アッサイも快速。ハイドシェックのピアノはますます好調で、自由闊達で自在な運びを聴かせる。一気に弾ききるのだが、ニュアンス抜群。特にテンポの収縮が随所にあるので、非常に面白く聴ける。これも第1楽章同様だ。


このモーツァルト演奏、「面白いな」という印象で聴き始めるんですが、だんだんハイドシェックに乗せられて、「実は、これこそモーツァルトにふさわしい演奏なのではないか」と、聴き手がその気になってしまうところがあります。まんまと罠にはまってしまったような感覚。
そんな風に思いながら聴いていると、やはりハイドシェックは天才だなと思いますし、このピアノをサポートし続けたヴァンデルノートもただ者ではないなと思うのであります。
未聴の方には、是非一度お試し下さいと、勧めたくなります。



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