で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2039回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ノベンバー』
前時代、“死者の日”を迎えた11月の寒村で、村人たちとドイツ貴族が繰り広げる生活には、死者と悪魔と魔女が当たり前に存在するダーク・ファンタジー。
エストニアのアンドルス・キヴィラフクの人気小説を映画化。
幻想的かつ民話的な摩訶不思議な物語を、美しいモノクロ映像で綴り、各地の映画祭で高い評価を受けた。
監督・脚本は、エストニア出身のライナル・サルネット。
物語。
前時代のエストニアのとある寒村が命もこごえる11月を迎えた。
もうすぐ、死者が蘇る死者の日がくる。
貧しい村人たちは悪魔と取引して手に入れた“魂”で動き出す無機物の使い魔“クラット”を使役し、生活の足しにしていた。
だが、村長のクラットが動かなくなってしまう。
そんな中、村の若い娘リーナは若者ハンスに恋をする。
しかし、彼女の父は勝手に別の中年男との縁談を進める。
一方、ハンスは、ドイツ貴族の男爵の娘に夢中。
そこでリーナは魔女に相談する。
原作:アンドルス・キヴィラフク
脚本:ライナル・サルネット
出演。
レア・レスト (リーナ)
ヨルゲン・リーク (ハンス)
イェッテ・ローナ・エルマニス (バロネス/男爵の娘)
ディーター・ラーザー (男爵)
カタニナ・アント (ルイーズ)
アルヴォ・ククマギ (レイン)
ターヴィ・エルマー (インツ)
ヘイノ・カルム (サンダー)
メーリス・ランメルド (ジャーン)
ジャーン・トーミン (悪魔)
カララ・エイホーン (魔女)
スタッフ。
製作:カトリン・キッサ
撮影:マート・タニエル
編集:ヤロスワフ・カミンスキ
音楽:ミハウ・ヤツァシェク
『ノベンバー』を鑑賞。
前時代エストニア寒村の11月、貴族と使い魔と死者と悪魔が現れるダークファンタジー。
エストニアのアンドルス・キヴィラフクの人気小説を映画化。
映画祭などで高評価を得た。
4つの恋愛話に無機物から作り出す使い魔クラットや疫病や魔術を絡ませた民話的で摩訶不思議な物語を美しいモノクロ映像で描き出している。
それは、艶笑的で幻惑的で悲劇的な奇譚。
アート過ぎずに愉快な描写と、2つの恋の話で軸を通す。
監督・脚本は、エストニア出身のライナル・サルネット。中堅作家だそうで、こなれた手腕で輪郭をはっきりさせ、新しい技法も取り入れ、現代的かつ古典的な手触りだったりも。でも編集は古典的ですが。
圧倒的なリアリティでファンタジーを描いていて、ぞわぞわします。
夜のモノクロ撮影の美しさは特筆。
おいらの好きな人狼エピソードがあるんですが、あまり絡まないのが残念。
珍しい画もありますが、けっこうどこかで見たノスタルジー的な画もあり、集合的無意識を受け取れ、国は違えど通じるものを感じたり。
ネットでアーカイブのアクセスできるのが進めば、集合的無意識がさらに強化されていくのかも。
当時的な実在感ある人物たちを実現するキャストが素晴らしい。レア・レストの汚れの中でも光る整ってはいても素朴さが際立つ容姿がおとぎ話の芯をつくる。ドイツ人貴族に『ムカデ人間』のハイター博士ことディーター・ラーザーが映画的な色を添える。
モノクロ映像がその背中を支え、時代も意識も渡らせる。
ファンタジーの素材が出てくる出てくるで、魔女、悪魔、使い魔、死者、人狼、貴族、召使、魔術、動物たち。よくぞとったという映像ににやにや。こういう眼福もあるのです。
エストニア共和国は、フィンランドの隣国、いわゆるバルト三国(ラトビア、リトアニア)で、その中でも最も北の国。寒い国は、やはり死が身近なんだね。
その寒さをモノクロ映像で伝わってくる。
そう、本当にある異世界に連れて行かれる。
これぞ異世界見学。
冷と愛で歪んで、息も白くなる雪作。
おまけ。
原題は、『NOVEMBER』。
『11月』。
2017年の作品。
形式:B&W
製作国:ポーランド / オランダ / エストニア
上映時間:115分
配給:クレプスキュール フィルム