【俺は好きなんだよ】第73回
『クレールの膝』(1970)
スタッフ。
監督:エリック・ロメール
脚本:エリック・ロメール
撮影:ネストール・アルメンドロス
出演は、ジャン=クロード・ブリアリ
オーロラ・コルシュ
ベアトリス・ロマン
ローラン・ド・モナガン
ミシェール・モンテル
ジェラール・ファネコッティ
ファブリス・ルキーニ
ほか。
物語。
ジェロームは、結婚を控えて、少年時代を過ごしたアンヌシー湖畔のタロワールの別荘を訪れる。
そこで彼は、偶然、友人の女流小説家オーロラと出会う。
彼女は、ジェロームの幼な友達だったヴォルテール夫人の家に部屋を借り、本を執筆していた。
夫人の家を訪ねたジェロームは、彼女の中学生の娘、ローラに興味を抱く。
そんな彼の心の動きを感じたオーロラは、ジェロームを次作の小説の主題にしようと考える。
ジェロームとローラは、次第に親密になってゆくが、彼がローラにキスしようとすると彼女は逃げる。
ある日、夫人の前夫の連れ子でローラの姉クレールが、恋人ジルを連れてやって来た。
ローラが、級友のヴァンサンといるのを目にし、ジュロームはクレールに興味を抱き、やがて彼女の膝に心魅かれてゆく。
彼は、女性が膝に触れさせることは、心に触れることが出来るのだという持論があった。
彼は、ローラの膝に触れようとするが・・・。
1920年年生まれのエリック・ロメールは、2007年現在もいまだ現役のフランスの映画監督。
1951年、アンドレ・バザンらによって創刊された「カイエ・デュ・シネマ」誌に寄稿しはじめ、後に57~63年の6年間、編集長をつとめていた。
その頃の記者には、ゴダールやトリュフォーもいた。
ヌーヴェルヴァーグの兄貴ともいうべき存在で、重要人物の一人。
一貫して男女の恋愛模様を軽快なタッチで描いている。
1959年、長編第一作『獅子座』を監督し1963年に発表。
その後、連作【六つの教訓話】シリーズを撮り始める。
2001年、ヴェネチア国際映画祭、金獅子賞・特別功労賞を受賞。
20歳のジャン=リュック・ゴダールが主演した貴重な習作『紹介またはシャルロットとステーキ』なんてのも撮っている。
大の飛行機嫌いで、かつて、小説も執筆していた。
連作を作る監督で、
【六つの教訓話(Six contes moraux)】シリーズ
『モンソーのパン屋の女の子』(1962)
『シュザンヌの生き方』(1963)
『コレクションする女』(1967) ベルリン国際映画祭・銀熊賞
『モード家の一夜』(1969)
『クレールの膝』(1970) 全米批評家協会賞・作品賞/ルイ・デリュック賞
『愛の昼下がり』(1972)
【喜劇と格言劇(Comédies et proverbes)】シリーズ
『飛行士の妻』(1981)
『美しき結婚』(1982)
『海辺のポーリーヌ』(1983) ベルリン国際映画祭・監督賞/国際批評家連盟賞
『満月の夜』(1984)
『緑の光線』(1986) ヴェネチア国際映画祭・金獅子賞/国際批評家賞
『友だちの恋人』(1987)
『レネットとミラベル/四つの冒険』(1987)
【四季の物語】シリーズ (Les Contes des quatre saisons)
『春のソナタ(Conte de printemps)』 (1989)
『冬物語 (Conte d'hiver)』(1991)
『夏物語 (Conte d'été)』 (1996)
『恋の秋 (Conte d'automne)』(1998)
などがある。
ロメールは、年下の友人バルベ・シュレデールと共に連作【六つの教訓話】を構想。
シリーズすべてに共通するのは、二人の女性に魅かれながら、そのどちらかを選ぼうと迷う男性が主人公であるということ。
で、『クレールの膝』は、62年から72年にかけて撮った【六つの教訓話】シリーズの第5作。
光の魔術師、ネストール・アルメンドロスがフランスの田舎を鮮やかになまめかしく映し出していて、素晴らしい。
偶然か運命か、いたずらなすれ違いが巻き起こす悲劇と喜劇を揺れ動く男と女の営みを、人間観察とエロチシズム、倫理をまたぎながら、緊張感とおおらかさの両オールで語る。
恋愛がサスペンスであり、アクションであり、喜劇であり、悲劇で、人間そのものであることを描きだす作家はそういるものではない。
『クレールの膝』は、日付をさしはさみながら進められる物語。
その日記スタイルの語り口は、一つの形式として定着しているほどだ。
下手すれば、ただグダグダ語り続ける(それだけじゃホントは無いんだけど・・・)男と女の観察日記にも成り下がる題材が語り口と視点で、ここまで昇華するのか・・・と嘆息させる一本。
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