で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2032回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『山歌』
60年代、流浪の民・山窩(サンカ)の家族と、孤独な少年の交流するドラマ。
主演は、『半世界』の杉田雷麟。
映画初主演を果たした。
共演は、『未成仏百物語 AKB48 異界への灯火寺』の小向なる、『偶然と想像』の渋川清彦。
監督・脚本・プロデュースは、ドキュメンタリー映画『馬ありて』で注目された笹谷遼平。
第18回伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞を受賞した自身の脚本を基に映画化。
物語。
高度経済成長期の1965年。
東京で暮らす中学生の則夫は、受験勉強のため田舎の祖母の家へやって来る。
ある日、彼は、山から山へと旅を続ける山で暮らす流浪の民の父娘と出会う。
彼らは、祖母から山人(サンジン)、父からはルンペン、一般的には山禍(サンカ)と呼ばれていた。
父のこともあり、一方的な価値観を押し付けられ、田舎の学校ではいじめられ、生きづらさを感じていた則夫は、既成概念に縛られず自然と共生する彼らに興味を持つ。
出演。
杉田雷麟 (則夫)
小向なる (ハナ)
飯田基祐
蘭妖子
内田春菊
渋川清彦 (省三)
白石優愛
五十嵐美
星野恵亮
渡邉純一
若松俐歩
増田敦
スタッフ。
アソシエイトプロデューサー:松岡周作
制作:橋本光生
助監督:葛西純
撮影監督:上野彰吾
照明:浅川周
美術:小澤秀高
衣装:金子澄世、廣田繭子
メイク:塚原ひろの
録音:小川武
編集:菊池智美
音楽:茂野雅道
『山歌』を鑑賞。
60年代日本、流浪の民・山窩(サンカ)の家族と、孤独な少年の交流するドラマ。
町の少年が森の人々と出会い、森へと分け入っていく大筋は、もはや<小『もののけ姫』>。
少年のまっすぐな成長物語。見るこちらの背筋が伸ばされる。
小品だからこその自然描写の丁寧さが大画面に映える。森の描写が素晴らしく、伺ったら、何か月も森に行き、自然を撮影したとのこと。これが映画館で見るべきレベルへズドンと引き上げている。
監督・脚本・プロデュースは、ドキュメンタリー映画『馬ありて』で注目された笹谷遼平。第18回伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞を受賞した自身の脚本を基に映画化した。
『半世界』の杉田雷麟が映画初主演、眼光が良い。『未成仏百物語 AKB48 異界への灯火寺』の小向なるの伸びる四肢で森を駆ける。渋川清彦が巨木のように道標となっている。
低予算ゆえ小さくまとまるしかない部分もあるのだが、それが写された壮大な自然の前で、人間社会の矮小さとなって迫りくる。
邦画界が無視しようとも、ここに自主映画、映画祭製作映画の真骨頂がある。
人は森を食って生きる鮎作。
おまけ。
タイトルは、山禍(さんか)と同じ響きの当て字で「さんか」と読む。
製作国:日本
上映時間:77分
2022年の作品。
配給:マジックアワー
山禍(さんか)や山人とは、そうでない人の呼び方で、当事者は世間師(せけんし)など別の呼び方をしていた。