菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

愛は毒、そして、薬。絶望でさえもまた然り。  『KOTOKO』

2012年04月23日 00時04分23秒 | 映画(公開映画)
で、ロードショーでは、どうでしょう? 第289回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」







『KOTOKO』




DIYの天才、塚本晋也の新作。
外からの脅威に対して、内から反抗の力が噴出するのを描いてきたが、今作はその噴出さえさせることができない者について描いている。

ただ、歌が、舞いが、愛が、噴出し、異形へと変える。


その歌も舞いも、COCCOという稀有なミュージシャンによって倍加している。
二つのエネルギーが合わさって、とてつもな相モノを生み出している。
彼女の存在、その肉体の痛々しさ、その声の良さ、映画と一体化している。


囁きと轟音、儚さと強靭さ・・・。
シンプルな外見の中に潜む中身。
世界、いや、あなたという存在の恐ろしさ。

そして、塚本作品でもっとも笑える作品である。
絶望にも良い絶望と悪い絶望がある。
特に、フィクションの絶望は前者になりえるのだと思う。

チープさは事実で、薄いカーテンしか自分を守ってくれない。
映画はそのあっまそれを移す。
視点は揺れ、足元はおぼつかない。
美しくもなければ、救いもない。
どん底の闇にも、生き続ければ、その目もじょじょに慣れてくる。


あなたと同じように、あなたも誰かにそう思われていることが伝わればいいのに。
だけど、僕にはピアノがない。それを伝える腕もない。
けれど、その絶望が存在することは知っている。
知っているよ、と会いに行こう。
歌わなくても、そのまだ来るよって振った手で伝っていけるかもしれない。




この闇と轟音は映画館でこそ、映える。

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