で、ロードショーでは、どうでしょう? 第645回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ストックホルムでワルツを』
スウェーデンを代表するジャズ・シンガー、モニカ・ゼタールンドの波乱に富んだ半生、960年代の数年を映画化した音楽伝記ドラマ。
監督はデンマーク出身のペール・フリー。
物語。
スウェーデンの田舎町に暮らすシングルマザーのモニカ・セタールンド。
電話交換手の仕事をしながらも、ジャズ・シンガーとしての成功を夢見る日々。
そんなある日、ジャズ・クラブのステージに立つ彼女の歌声を聞いた評論家から、ニューヨークで歌うチャンスをもらうモニカは幼い娘エヴァ=レナを父母に預けて、アメリカへ旅立つ・・・・・・。
脚本は、ペーター・ビッロ。
出演。
モニカ・ゼタールンドに、エッダ・マグナソン。
スウェーデンのミュージシャンで、これが映画デビューだそうで、その歌声と美貌だけでなく、裸身も厭わず、庶民からの成功と転落まで、目を見張る演技を見せている。
ベース演奏者のストゥーレ・オーケルベリに、スベリル・グドナソン。
ほかに、シェル・ベリィクヴィスト、ヴェラ・ヴィタリ。
製作は、レーナ・レーンバリ。
撮影は、エリック・クレス。
狭い世界を絶妙に切り取っており、人間の集中した視野をうまく捕まえている。
説明ショット(特に場所)を少なく、街ではなく店などで示す。
だが、画面自体に当時の空気感があるので、混乱はない。
美術は、ヨセフィン・オースバリ。
衣装は、キッキ・イランダー。
当時の空気感、北欧感が心地よい。
編集は、オーサ・モスバリ。
小気味よいテンポ、で、まさにセンスのいい演奏のよう。
音楽は、ペーター・ノーダール。
当時の空気と名曲を邪魔しない寄り添うような音楽。
数年の間に絞ったことで、一人の女性のドラマに語りが集約しており、彼女のことを知らなくても見やすい。
当時のスウェーデンは人気の北欧インテリアが花開いた時期で、その点も楽しめる。
テンポの良さと音楽の良さも相まって、満足度が高い好作。
おまけ。
邦題の『ストックホルムでワルツを』は少し残念。
原題は『MONICA Z』でモニカ・ゼタールンドの意味だし、英語題は『WALTZ FOR MONICA』で、『モニカにワルツを』になる。
これは、モニカ自身が出したアルバムのタイトルから。
『デビー・フォー・ワルツ』というジャズの曲名からだろうが、ジャズの話でもあるし、なんとも奇妙な感じも受ける。
『ストックホルムでジャズを』じゃダメだったんだろうね。
映画の中でも、「ジャズはうけない」と言われているが、それをタイトルからも受け取ったり。
スウェーデンは音楽の最大の輸出国の一つで、モニカはその先駆者と言える。