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菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

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アナーキー・イン・ザ・JPな金子文子と子朴子烈子。 『金子文子と朴烈』

2019年04月01日 00時00分30秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1474回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『金子文子と朴烈』

 

 

 

 

大正の日本で、無政府主義者の朴烈(パク・ヨル)と金子文子(かねこふみこ)が、関東大震災の混乱の中で政府にスケープゴートにされた2人が弾圧に屈せず、獄中でも愛と信念を貫き、国家権力に敢然と立ち向かう伝記ドラマ。

 

主演は、『建築学概論』のイ・ジェフンと本作の演技で数々の賞に輝いた新鋭チェ・ヒソ。

 

監督は、『王の運命―歴史を変えた八日間―』、『空と風と星の詩人 ~尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯~』のイ・ジュンイク。

 

 

 

物語。

1923年、東京。
社会主義者たちが集う有楽町のおでん屋で働く金子文子は、“犬ころ”という詩に心を奪われ、店の知人に作者である朝鮮人アナキストで不逞鮮人のレッテルを貼られている朴烈を紹介してもらう。
二人は、同志として、恋人として、行動を共にしていく。
やがて、関東大震災が発生。社会が大混乱に陥るものの政府の対策が遅れていた。そこで内務大臣の水野錬太郎はあることを支持する。
それは在日朝鮮人社会を揺るがすものだった。
それに対抗し、朴烈と文子は、歴史的戦いへと身を投じていく。

脚本は、ファン・ソング。

 

 

 

 

出演。

イ・ジェフンが、朴烈(パクヨル)。
チェ・ヒソが、金子文子。

キム・インウが、水野錬太郎。

山野内扶が、布施辰治。
キム・ジュンハンが、立松懐清。
金守珍が、牧野菊之助。

趙博が、内田康哉。
柴田善之が、山本権兵衛。
小澤俊夫が、田健治郎。
佐藤正行が、平沼騏一郎。
金淳次が、若槻礼次郎。
松田洋治が、江木翼。

ハン・ゴンテが、栗原一男。
ユン・スルが、新山初代。

 

キャストには金守珍ら"劇団新宿梁山泊"のメンバーが顔を揃えている。

 

 

 


スタッフ。

製作は、イ・ジョンセ、ショーン・キム。
製作総指揮は、キム・ジンソン。

 

撮影は、パク・ソンジュ。

美術は、イ・ジェソン。
衣装は、シム・ヒョンソプ。

編集は、キム・ジョンフン。

音楽は、パン・ジュンソク。

 

 

 


大正日本、無政府主義者の朴烈と金子文子が関東大震災でのある事件から政府と対立していく実録ドラマ。
社会のうねりと差別と迫害が引き起こす罪と愛と罰。育ちから来る戦い。覆す熱量の出口は暴力しかないのか。事情と情状。
チェ・ヒソの可愛らしさ。イ・ジェフンの存在感。二人の情感溢れる日本語の響き。新宿梁山泊の役者たちの力量たるや。
時折の日本語ズレが目をつぶれる程度だったのは初めて。
裁判ものとしての面白さはアメリカ映画並み。
撮影も丁寧で狭い部屋にも広がりがある。人物が浮かび上がっている。
今作をヒットさせる韓国映画界の送り手受け手の豊かさよ。
政治的なことのもたらすこの込み入った感情もまた映画ならでは。
この政治的ラブストーリーを今の日本で映画で語れるのか。
出でよ、アナーキー・イン・ザ・JP、権力の暴力性に抗え。
重みに圧し潰されない軽みに痛み膨らむ文作。

 

 

 

 

 

 

おまけ。

原題は、『박열』。
『朴烈』。読みは「パク・ヨル」。日本語読みだと「ボク・レツ」(パク・レツ)です。

英語題は、『ANARCHIST FROM COLONY』。
『植民地からの無政府主義者』。

第13回大阪アジアン映画祭での公開題は、『朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキスト』。

 

 


上映時間は、129分。
製作国は、韓国。
映倫は、PG12。

 

 

 

受賞歴。

2018年の大鐘賞にて、主演女優賞と新人女優賞(チェ・ヒソ)を、受賞。

 

 

 

 

キャッチコピーは、「朴と共に死ねるなら、私は満足しよう――」。
ちょっと足りないのよね。
せめて、「彼だけを死なせはしない、それでは寂しすぎるーー」とか、「朴と共に死ねるなら、私はそれを肯定しよう――」とかどうかな。

 

 

 

 

 


この予算の使い方の巧さも映画の話法。  
   
描かれるのは『菊とギロチン』と同じ時代です。
  
スティーヴ・マックィーンの『HUNGER/ハンガー』、『シド・アンド・ナンシー』を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

Wikiによると。
朴烈の本名は朴準植(パク・ジュンシク、박준식)。朴烈は書名。
在日本大韓民国民団の初代団長で、1945年に釈放。韓国に帰国後、朝鮮戦争で捕虜となって北朝鮮に連行され、思想矯正される。

金子 文子(かねこ ふみこ、1903年1月25日 - 1926年7月23日)は、大正期日本の社会主義思想家、アナキスト、ニヒリスト。関東大震災の2日後に、治安警察法に基づく予防検束の名目で、愛人(内縁の夫)である朝鮮人朴烈と共に検挙される。十分な逮捕理由はなかったが、予審中に朴が大正天皇と皇太子の殺害を計画していたとほのめかし、文子も天皇制否定を論じたために、大逆罪で起訴される。獄中結婚し、朴文子(パク・ムンジャ)となる。
有罪となるが、後に天皇の慈悲として無期懲役に減刑され、宇都宮刑務所栃木支所に送られるが獄死(自殺とされる詳細は不明)。

 

 

金子文子の言葉。

「生きるということはただ動くということでははない。私の意志を持って動かねば生きるとは言えない。たとえそれが死に向かっていようとも私の意志であるならば、それは生を肯定することなのだ」(うろ覚え)

ルソーの名言「生きるとは呼吸することではない。行動することだ」からの発展かもしれないな。

 

 

イ・ジュンイクの前作『空と風と星の詩人 ~尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯~』の尹東柱も40年代に留学した日本にて思想犯で投獄されています。

 

 

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